シュトゥットガルト(ドイツ) – ボッシュ・グループは2019年、自動車市場の低迷に反して、売上高は前年と同様の高水準を維持しました。暫定決算報告によると、2019年の売上高は779億ユーロ(約9.5兆円*)でした。なお、売上高は前年と同水準ながら、為替調整後では前年比1.1%減となりました。暫定決算報告の発表に際して、ボッシュ取締役会会長であるフォルクマル・デナーは次のように述べました。「弱い経済と自動車生産台数の急激な落ち込みにより、ボッシュも影響を受けています。現在の課題を鑑みると、ボッシュの多様性が状況を安定させる効果を発揮し、既存事業の拡大や新規事業の展開に繋がっています。経済状況は厳しいものの、ボッシュは重要な成長分野への投資を継続しています」。ボッシュでは2020年だけでも、モビリティの電動化、自動化、そしてネットワーク化に向けて総額10億ユーロ以上の投資を計画しています。「私たちはイノベーションリーダーとして、代替モビリティへの移行を支援するとともに、それにともなう機会を捉えています」とデナーは述べています。

2019年度の支払金利前税引前利益(EBIT)は約30億ユーロ(約3,660億円*)で、推定売上高利益率は4%弱でした。業績に影響を与えた要因として、特に主要市場である中国とインドにおける自動車生産台数の減少、車両全体に占めるディーゼル車両割合の減少、リストラ費用の計上(特にモビリティ分野において)、および将来的に重要となるプロジェクトに対する先行投資の増加が挙げられます。「2020年は、特に自動車業界で多くの企業にとって厳しい状況が続きます。したがって、ボッシュも例外ではありません」とボッシュの財務担当取締役(CFO)兼ボッシュ取締役会副会長であるシュテファン・アーセンケルシュバウマーは述べています。「それでもなお、私たちにとって重要なセクターや地域においては、2020年に再度市場を上回る成長率を達成したいと考えています」と加え、ボッシュが今後も徹底した収益改善と生産能力の調整を続ける必要があることに言及しました。

未来のモビリティ:変革の課題
ボッシュは、未来のモビリティと代替モビリティへの移行を成功させる方法について明確なイメージを有しています。「未来のモビリティは電動化と自動化にとどまらず、ネットワーク化およびパーソナライズ化されるでしょう」とデナーは語り、多様な製品ポートフォリオにより、ボッシュはさまざまなシナリオや開発に向けて、どの企業よりも準備が整っていることを付け加えました。一方でデナーは、未来のモビリティに向かう過程で、自動車業界にいくつかの大きな課題があることを示唆しました。第一に、車に関する不合理な意見が道路交通についての冷静な議論を抑え込んだこと。第二に、自動車業界において移行を実現するためには、さらなる時間が必要であるということ。デナーは次のように強調しています。「特に仕事に関しては、eモビリティへの移行と同様に、基礎的なプロセスを一夜にして実現することはできません」。第三に、経済状況により、自動車業界が構造的に変化する必要性が高まっていること。ボッシュは世界的な自動車生産台数は2020年に3年連続で縮小すると予測しています。2020年にはさらに2.6%減少し、世界における生産台数は約8,900万台になると予想しています。これは、2017年よりもほぼ1,000万台少ない数字です。ボッシュは今後数年に渡りこの水準が継続すると予測しており、2025年以前に世界の自動車生産台数が増加することはないと見ています。

ボッシュは、業界の劇的な変化と過剰生産能力に対して、コスト構造と人員数を可能な限り社会的に認められる方法で調整する予定です。「私たちはすでに、この問題に関してバンベルク、シュヴィーバーディンゲン、シュトゥットガルト=フォイヤバッハといった主要拠点の社会的パートナーと合意に達しています」とデナーは語ります。目標は、各拠点で個々の成長の機会を確保し、可能な限り多くの従業員とそのスキルを維持するアプローチを選択することです。

未来のモビリティ:ボッシュにとってのビジネスチャンス
「代替モビリティへの移行により、モビリティや車がなくなるわけではありません」とデナーは述べ、ボッシュがモビリティ ソリューションのリーディングプロバイダーとして、引き続き有利な立場にいることを付け加えました。またデナーは、「自動車業界における根本的な大変動には、ボッシュにとっての大きな機会が潜んでいます」と続けます。その中には、未来のモビリティに対する需要の高まりがあります。国際交通フォーラム(ITF)によれば、個人のモビリティは2015年から2030年の間に世界で50%近く増加するとされています。「近い将来は、車は最も選ばれる輸送手段であり続けるでしょう。そして、車にはさらに安全かつ便利で環境に優しい輸送手段になる見込みが十分にあります」とデナーは述べました。モノのインターネット(IoT)人工知能(AI)、そして燃料電池といった新しいテクノロジーもまた、代替モビリティへの移行をさらに推進することにつながります。イノベーションリーダーとして、ボッシュはこれらの開発分野への早期参入が利益につながると見ています。また、eモビリティ市場に新規参入する自動車メーカーからは、コンポーネントよりもむしろ完全なソリューションに対する要望が高まりを見せています。デナーはさらに説明を続けます。「フルサービスプロバイダーである私たちにとって、より多くのシステム事業が意味するのは、数十億ユーロにもおよぶ売上見込みです」。今後、ボッシュはさらにエレクトロニクスおよびソフトウェアに対するトレンドからも恩恵を受けると考えられます。ボッシュは、エレクトロニクスのソフトウェア集約システムの市場は、現在から2030年まで毎年20%成長すると予測しています。ボッシュはソフトウェア開発に年間約37億ユーロを投資し、現在3万人のソフトウェアエンジニアを雇用しています。

従業員のスキルアップ:2万人の従業員向けのAIトレーニングプログラム
デナーは、能力のある従業員は現在と未来の課題を克服するための戦略的な成功要因と捉えています。「ボッシュは自らを学習する組織と捉えており、日々の業務に学びが組み込まれているのです」とデナーは述べています。従業員のスキルアップに対する定期的な投資に加えて、ボッシュは約2万人の従業員に向けた新たなAIトレーニングプログラムの提供に着手しています。これには、マネージャー向け、エンジニア向け、AI開発者向けの3種類のレベルでのトレーニングフォーマットを準備しており、責任をもってAIを使用するためのガイドラインも含まれています。

事業の展開:成長分野に約30億ユーロ
ボッシュでは、既存事業の拡大と、新規事業への展開を目指しています。「私たちは未来のテクノロジーへの先行投資によって実現したいと考えています」とデナーは述べています。「2013年から2020年におけるボッシュの新たな成長分野に対する投資額は、総額約30億ユーロにのぼる見込みです」。2020年、ボッシュは燃料電池を含めたeモビリティ分野だけで5億ユーロを投資する予定です。自動運転分野には6億ユーロ以上を、さらにコネクテッド インダストリー分野に1億ユーロを投資する予定です。加えて、ボッシュは2015年からモノのインターネットに関する活動を広げるために6億ユーロを投資してきました。これには、ベルリンの新しいボッシュIoTキャンパスや、ボッシュのコネクテッド インダストリー事業の拡大が含まれます。

競争優位性の活用:テクノロジーリーダーシップと中立性
新しいテクノロジーへの取り組みにより、ボッシュは市場において数十億ユーロに値する重要な売上見込みを確保しようとしています。例えば、安全な自動運転の実現には、カメラやレーダーに加えて第三のセンサーが必要です。これこそが、ボッシュがセンサーの製品ポートフォリオを幅広く揃え、長距離LiDARセンサーの生産準備を進める理由です。デナーはこう説明します。「LiDARによりセンサー間のギャップを埋め、自動運転を実現可能にします」。レーザーベースの距距技術を用いたLiDARは、路上の石など離れた距離にある非金属の物体でも確実に検知できます。そのため、ブレーキや進路変更などの運転操作も適切なタイミングで開始できます。

ボッシュはまた、燃料電池パワートレインの商品化も推進しています。ボッシュはPowercell社と協力してパワートレインのコアコンポーネントであるスタックを開発しており、2022年の市場投入を計画しています。また、高効率の内燃機関への投資も継続しています。ボッシュの市場調査によると、2030年に新車登録される車両の3台のうち2台は、ハイブリッドのオプションの有無にかかわらず、依然としてディーゼル車またはガソリン車である見込みです。デナーはさらに説明をこう続けます。「排気ガスのないモビリティへの道は、テクノロジーニュートラルでなければなりません。それこそが、モビリティを市場に手頃な価格で提供する唯一の方法なのです」。解決策として挙げられるのが、高効率の内燃機関と最先端の電気モーターのパワートレインミックスです。さらに、デナーは再生可能な合成燃料の使用に尽力しています。「すでに路上を走っている旧型車も、CO2排出量の削減に貢献する必要があるでしょう。再生可能な合成燃料の使用により、燃焼プロセスをカーボンニュートラルにすることが可能となります」。そのために、デナーは政策立案者に対し、テクノロジーニュートラルでイノベーションが受け入れられる環境づくりに向けた枠組みの構築を呼びかけています。これは、代替モビリティへの移行を成功させるために必要なステップであり、既存の仕事を維持し、新しい仕事を創出するものだとデナーは述べています。

未来のモビリティの先:新たなテクノロジーの開発
ボッシュは、新たなテクノロジーの開発とクライメートアクションの促進に向け、未来のモビリティに先んじることで、経済と環境、そして企業の社会的責任のバランスを維持したいと考えています。IoTのリーディングカンパニーとなる過程で、ボッシュはAIに取り組んでいます。「私たちの製品をお客様のアシスタントとして機能させるために産業用AIの活用を考えており、ひいてはこの領域で世界的リーダーの一員となることを目指しています」とデナーは語っています。ボッシュはテュービンゲンの新たなAIキャンパスの建設に1億ユーロを投資しているほか、独自のクライメートアクション活動を推進しています。2019年末には、ボッシュはドイツの全拠点でカーボンニュートラルを達成しており、2020年末までにはボッシュの世界の全拠点で実現する予定です。「クライメートアクションとエネルギー効率がボッシュにさらなるビジネスチャンスをもたらします」とデナーは語ります。ドイツだけで、2025年までに電力の最大45%が再生可能エネルギー資源から供給されるようになる予定です(出典:ドイツ経済エネルギー省)。「そのためボッシュでは、今後数年にわたって成長するヒートポンプ事業に総額1億ユーロを投資する予定です」

2019年の事業セクター別業績
2019年のボッシュの業績を事業セクター別で見ると、各部門で同様の結果となりました。売上の割合が最も大きいモビリティ ソリューションズでは、世界の自動車業界の成長率を上回り、売上高は前年と同水準の470億ユーロに達しました。なお、名目ベースでは0.1%減、為替調整後では1.5%減となります。消費財セクターでは、売上高が名目ベースで0.2%減、為替調整後で0.6%減となる178億ユーロに達しました。BSH Hausgeräteおよびボッシュ電動工具事業部は激しい競争環境の中で堅調な業績を維持し、ボッシュ電動工具は平均以上の実績を上げました。産業機器テクノロジー セクターは、機械工学セクターにおける4%超の受注減にもかかわらず、前年比0.1%増の74億ユーロの売上を達成しました。なお、為替調整後の売上高は1.2%の減少となりました。エネルギー・ビルディングテクノロジー セクターの売上高は1.5%増の56億ユーロに上り、為替調整後は0.8%増となりました。

2019年の地域別業績
欧州におけるボッシュの事業は安定した発展が見られ、売上高は前年と同等の410億ユーロとなりました。北米における売上高は5.3%増の130億ユーロでした(為替調整後は0.5%減)。南米における売上高は、1.1%増もしくは為替調整後で5.3%増に相当する14億ユーロに上りました。一方、アジア太平洋地域においては、全体的に事業展開がマイナス傾向にあり、売上高は3.1%減の225億ユーロとなり、為替調整後は4.5%の落ち込みとなりました。売上高の減少は、中国とインドにおける自動車市場の低迷による影響を受けたもので、日本と東南アジアではプラスに展開しています。

従業員数:世界で約40.3万人
2019年12月31日時点で、ボッシュ・グループの総従業員数全世界あわせて約40.3万人で、前年比で約6,800人減少(1.7%減)しました。主に、中国とドイツでの変化が起因しています。

2020年の展望:弱い世界経済にもかかわらず収益力を強化
ボッシュは、2020年における世界経済の成長率は2.0%と予測しています。「継続的な経済の弱さを前に、世界的な成長はさらに減速するでしょう」とアーセンケルシュバウマーは述べています。特に、自動車や機械の生産といった重要な中核産業が下降傾向にあります。さらに、米国と中国間の貿易摩擦や差し迫る英国のEU離脱が、予測に影を落としています。自動車業界の過剰生産能力とパワートレイン テクノロジー ミックスへの変化を考慮し、ボッシュはコスト構造の見直しを継続しています。必要に応じて、社会的に認められる方法で人員調整が行われる予定です。アーセンケルシュバウマーはこう続けます。「ボッシュにとっても非常に厳しい年になると予測しています。その中で、私たちは徹底的に収益改善への取り組みを進めます」。ボッシュが将来的に重要なテクノロジーや会社の変革に多額の先行投資を行えるようにするには、高いレベルの収益改善が不可欠です。

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このプレスリリースは2020年1月29日に Robert Bosch GmbH より発行されました。
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