タニア・リュッカート(Tanja Rückert)
ロバート・ボッシュGmbH取締役会メンバー
マイク・マンスエッティ(Mike Mansuetti)
ボッシュ北米法人社長

2024年1月8日
CES®国際家電ショーにて


本稿は実際の講演内容と異なる場合があります。

タニア・リュッカート
みなさま、ボッシュのプレスカンファレンスへようこそ!対面やライブストリームでご参加いただき、大変光栄です。

今日は、私たち全員に関係のあるテーマについてお話ししたいと思います。それはエネルギーについてです。みなさまは、過去50年間で世界のエネルギー使用量が2倍になったことをご存じでしょうか。しかし、1970年代に生きていた人々は、当時は町が暗かった、なんてことはないと知っています。自動車や、食洗機、エアコン、飛行機での旅など、今日では当たり前となっている現代の快適性と利便性の多くがすでに存在していたからです。しかし世界中でより多くの人々が現代の技術を利用し、それを頻繁に利用することで、エネルギー消費量が激増しました。しかも、エネルギー消費量はまだ増え続けており、毎年1~2%の割合で需要は拡大しています。

問題は言うまでもなく、需要のほとんどを化石燃料でまかない続けていることにあります。化石燃料は依然として世界の消費エネルギーの80%以上を占めていますが、気候を守るためには化石燃料への依存を減らす必要があります。もちろん、消費を産業革命前の水準に戻すことは不可能です。なんとかして、増え続けるエネルギー需要と、地球の健全性や安定性とのバランスを取る方法を見つけなければなりません。社会的、経済的、環境的な観点から、持続可能なアプローチが必要なのです。

このことは、特にエネルギーに関して当てはまります。今日は、持続可能な方法でエネルギー需要を満たせるようにボッシュが開発している幅広いテクノロジー、つまり私たちの生活を「Energized #LikeABosch」なものにするソリューションについて、お話ししたいと思います。

ボッシュは、エネルギー重視の技術革新に向けて、2方面からのアプローチを追求しています。
  • 第1に、ボッシュでは従来のエネルギー源の使用の最適化に焦点を当てています。具体的には、継続的な効率の向上、エネルギーとコストの節約、そして電化を推進することです。特に電化は、個人輸送、商用輸送、家庭など、多くの分野でネットゼロ目標を達成するための道筋として大きな可能性を秘めています。
  • 第2に、ボッシュでは従来のエネルギー源にとどまらない、より持続可能な代替エネルギーに目を向けています。特に、将来のクライメートニュートラルなエネルギー需要を満たすために、中心的な役割を果たすと考えている水素に焦点を当てています。それは、生産・供給インフラの構築から、革新的な新しい水素ベースの技術開発まで、水素バリューチェーンにおける複数のポイントで取り組んでいます。

それでは、まずボッシュが従来のエネルギーの利用をどのように強化しているのか、もう少し詳しく説明しましょう。先ほど述べた通り、これに関するボッシュの取り組みの焦点は電化です。電化技術は、化石燃料よりもはるかに効率的なことが多いので、一見すると電化は単純にエネルギー消費量を削減する手段のように見えます。しかし、電化はそれだけにとどまりません。電化ソリューションは、クライメートニュートラルな運用がすでに組み込まれているため、必要なのは再生可能エネルギーから生成された電力の供給だけです。

特にモビリティに関してはすでに電化が進んでおり、ボッシュはeモビリティのバリューチェーンにおけるリーディングサプライヤーです。実際、eモビリティにおけるボッシュのテクノロジーは、チップからeAxle、eBikeからトラック、バッテリーから燃料電池、ハードウェアからソフトウェアやサービスに至るまで、世界に類を見ないほど多様です。

ここ数年、日常的な輸送手段としての電気自動車の実用性は劇的に高まりました。しかし依然として大きな障害となっているのは、充電プロセスです。これまで数分あればガソリンスタンドを探してガソリンを入れることができたドライバーは、突然、電気自動車をどこで、とりわけいつ、充電したらよいのか、という問題に直面しています。ボッシュでもこれについては考え、解決策を見つけました。もしあなたの車が自動的に充電できたら、どうでしょうか。

一昨年、ボッシュの自動バレーパーキングソリューションは、ドライバーレスパーキングシステムとして初めて正式に商用利用が承認されました。今年のCESでは、このシステムに新たに加わる革新的な機能である自動バレー充電を発表します。外出先で電気自動車を自動的に充電する方法です。これもエネルギーに関係するもので、CESイノベーションアワードを受賞しました。空いている充電スポットを探したり、買い物の途中で駐車場に戻ってプラグを抜いたりしなければならない、と心配するのは不要です。スマートフォンのボタンを押すだけで、あとはシステムが代行し、車両を充電ステーションに移動させ、フル充電されたら駐車スペースに戻してくれるからです。

これは開発中ではなく、すでに利用可能なシステムです。最先端の駐車場を新設する必要も一切ありません。ボッシュの自動バレー充電ロボットは、自動バレーパーキングシステムを設置済みの駐車場にも、必要なインフラを初めて設置する駐車場にも、どちらにも配備してセットアップできるように設計されています。この自動バレーパーキングと自動バレー充電の組み合わせは市場では他に類がなく、すでに自動車業界のお客様の間で大きな関心が寄せられています。

うまい話のように聞こえますが、実はこれだけではありません。eモビリティの利便性を高めるための一歩一歩の積み重ねが、その魅力を高め、結果的に普及も促進されます。実際、私たちはさまざまなレベルでeモビリティの実現可能性と魅力の向上に努めています。SiC(シリコンカーバイド)技術にも投資しているのは、そのためです。SiC半導体チップは標準的なチップよりも消費エネルギーを最大50%削減するため、電気自動車の航続距離の伸長と効率的な充電が可能になります。SiC半導体チップを車両のパワーエレクトロニクスに搭載すると、バッテリー充電1回あたりの走行距離が大幅に増え、航続距離が平均6%延伸します。

現在、ここ米国での大型投資をはじめ、ボッシュではSiC半導体チップの生産能力を世界的に増強しています。数ヶ月前に発表した通り、私たちはこのほどカリフォルニア州ローズビルに拠点を置くウエハ製造工場を買収しました。今後数年間で、この工場に15億ドル以上を投資することを計画しており、2026年までに量産の開始を目指しています。この重要なテクノロジーの生産をここ米国で増産するための準備として、ボッシュのブースではSiC半導体のメリットについて説明するデモをお見せします。

ボッシュはモビリティ分野に加えて、エネルギー最適化の有力な候補として家庭にも焦点を当てています。

マイク・マンスエッティ
私たちは、家庭におけるエネルギー使用の最適化には大きな可能性があると考えています。たとえば米国では、総エネルギー使用量と温室効果ガス総排出量のほぼ3分の1は、住宅と商業用ビルが占めています。米国の家庭の半数以上では、主な暖房や調理用の燃料としていまだにガスやその他の化石燃料に依存しているため、これは驚くことではありません。

ボッシュは、建物や建物内のエネルギー効率を高め、電化を促進するためのテクノロジーを世界中で開発しています。私たちが重視しているのはヒートポンプ技術です。ここ北米では非常に革新的な技術である新しいAir to Air空気熱源のIDSウルトラヒートポンプをCESで発表し、今年中に市場導入します。多くのAir to Air空気熱源ヒートポンプとは異なり、これは冬の寒さが厳しい地域向けに開発されました。従来の空気熱源ヒートポンプは、比較的安価で設置が容易という利点があり、他のヒートポンプと同様、暖房も冷房も可能です。しかし、極端に低い気温ではあまりうまく機能しないという欠点がありました。

私たちは先日、米国およびカナダで調査を実施したところ、次のことが明らかになりました。ほぼ全員がヒートポンプについて知っており、現時点で全回答者の5分の1以上が所有していました。しかし地理的には大きな偏りを見せました。ヒートポンプの所有率が最も高いのは南東部に集中しており、これは冬が暖かいためだと考えられます。一方ニューイングランドや北中西部のような寒い地域では、ヒートポンプの所有率が6分の1から7分の1に低下しました。こうした地域でヒートポンプを使用する数少ない住宅所有者は、通常、気温が氷点下になると、ヒートポンプを引き継ぐバックアップシステムを継続的に稼働させる必要があります。

ボッシュの新しい寒冷地用ヒートポンプなら、この必要はほとんどありません。外気温が5°Fになるまで100%暖房能力を発揮し、さらに-13°Fまで稼働するからです。これにより、北部地域に住む人々も化石燃料ベースの暖房システムへの依存を減らし、しかも比較的安価に電動式に切り替えることが可能になります。それは、米国では州からの補助金や連邦政府による税額控除が増えているためです。また、ヒートポンプに切り替えることは、電気が持つ高い持続可能性とネットゼロへの対応に加え、エネルギーとコストの削減というメリットもあります。ヒートポンプはエネルギー効率がガス炉よりも3倍~5倍優れており、標準的な電気炉やベースボードヒーターの約半分の電力で使用可能です。これは、自宅の冷暖房に関する主な懸念事項として、コストと効率と挙げた3分の2近い調査回答者にとって間違いなく朗報となるでしょう。

実際、米国エネルギー省のジェニファー・グランホルム長官が、新型IDS寒冷地用ヒートポンプを設置したニューハンプシャー州の住宅を今朝訪問しました。そして同省は、ボッシュの寒冷地用ヒートポンプが、住宅向けの“寒冷地用ヒートポンプチャレンジ”の一環として、研究室での実験から実地試験に進むための要件を満たしていることを確認しました。このチャレンジの目標は、ヒートポンプ技術を促進させ、消費者が家庭に電化された冷暖房の選択肢を持てるようにすることです。

実際、ヒートポンプ技術は非常に有望なため、ボッシュでは家庭の他の分野でも利用できるように取り組んでいます。そのひとつが、このたびCESで展示している新しいハイブリッド電気給湯器です。今年後半に北米で発売予定のこの給湯器は、ボッシュのラインナップの中でも最もエネルギー効率に優れた給湯器です。この装置は、ヒートポンプ技術と電気的要素とを組み合わせることで、従来の貯湯式電気給湯器の3倍から4倍の効率を実現しており、ENERGY STAR認証を取得しました。ボッシュは、このようなソリューションで住宅の電化の道を整えています。

もちろん、エネルギー節減の手段として家電製品にも焦点を当てています。ボッシュの家電製品は、長い間この分野で最前線に立ってきました。これは、3年連続で米国環境保護庁およびエネルギー省から「ENERGY STARパートナー・オブ・ザ・イヤー」に指名されたことでも明らかです。

多くの方が、電気代やグリーンエネルギー使用を最適化するために、時間を決めて家電製品を稼働することが可能だとご存じでしょう。しかし実際、1日の中で何時に稼働させるべきかを把握し、さらに最適な時刻に忘れずにスイッチを入れることは、必ずしも容易ではありません。ボッシュの新しいMySchedule機能は、この両方をサポートします。この機能はボッシュの新世代の食洗機に搭載されており、ホーム コネクトプラットフォーム経由で操作します。つまりMyScheduleを使用すると、電力が最も安くなる時間帯やグリーンエネルギーが利用可能になる時間帯まで、自動的に稼働を遅らせることができるのです。このように、忘れずに最適な時刻にスタートボタンを押さなくても、エネルギー使用を最適化できるようになりました。

もうひとつ、電動工具の事業でもエネルギー最適化のアプローチを図っています。コードレス電動工具を使用したことがある方は、何種類ものバッテリーを把握して、いちいち充電されているかどうか確認することがどれほど大変か、ご存知のことでしょう。ボッシュは、管理すべきバッテリーソリューションの数を減らすことで、作業を簡略化することを目指しています。AMPShareはボッシュの電動工具とボッシュパートナーのAMPShare対応製品で同じバッテリーを使用できるようにする、共有バッテリーパックシステムです。多様なバッテリーの品ぞろえを簡略化できることは、作業者から熱い支持を受けてきました。AMPShareを立ち上げて以来、ボッシュは北米の15社を含む30社以上をグローバルパートナーに迎えてきました。新しく迎え入れることになるパートナー3社は、今回のCESで紹介しています。

ボッシュは単に新しいパートナーを歓迎するだけでなく、新しい製品の発売に向けて協力しています。現在ボッシュのブースに展示されているPerfect ProラジオのようなAMPShare対応製品が、近い将来新たに多数、市場に出回ることになると期待しています。AMPShareの目標はバッテリーを管理しやすくすることに加え、少数のバッテリーで多くの工具を使用できるようにすることで、材料の使用量や廃棄量を削減することにあります。

家庭以外では、商用分野でのエネルギー効率の最適化にも取り組んでおり、これに関しては製品にとどまらず、コンサルティングやシステムソリューションにまでおよんでいます。北米をはじめ、ボッシュは世界的にシステム統合に関する事業に多額の投資を行っています。数ヶ月前に発表したとおり、私たちは先日カナダに拠点を置くPaladin Technologies社を買収し、北米での活動を大幅に拡大しました。ボッシュは子会社のClimatec社を通じて、すでに米国で非常に強力な事業体制を構築しています。Climatec社は引き続き成長し、エネルギーに焦点を当てた建物の最適化で、さまざまなお客様をサポートしています。たとえば、Climatec社は過去7年間、カリフォルニア州ローランド・ハイツにあるローランド統合学区と協力してきました。この学区では冷暖房空調設備の近代化、ビルディングオートメーションシステム、LED照明、太陽光発電設備など、Climatec社による改善によって効率が向上し、今後数年間でエネルギーコストを3,800万ドル以上節約できる見通しとなっています。

私たちの住宅および消費財ポートフォリオとシステム統合事業の拡大は、ボッシュが北米において収益性の高い成長に注力していることを示しています。モビリティ事業もこの成長の大きな部分を占めており、特にボッシュのエネルギー戦略の2番目の柱に関連しているため、これから詳しくお話ししたいと思います。

リュッカートが触れたように、エネルギーの課題に取り組むもうひとつの方法は、新たな再生可能エネルギー源である水素を活用することです。再生可能エネルギーが最も効率的に生成される地域は、世界中で最も日照量の多い地域や風の強い地域ですが、問題はこれが必ずしもエネルギー必要量の多い地域とは一致しないことです。そこで、このエネルギーを他の地域に輸送するための貯蔵媒体が必要ですが、電気を用いて生成される水素のような化学媒体は、最適な方法を提供してくれます。

ボッシュは、水素がエネルギー供給における脱炭素化の鍵のひとつであると確信しています。そこで、水素テクノロジーに多額の投資を行い、水素バリューチェーンに沿ったソリューションを開発しています。ボッシュの取り組みの主な柱は、水素燃料電池パワートレインです。これが大型車両の電動化への手段になると信じています。ボッシュは昨年の夏、シュトゥットガルトで燃料電池パワーモジュールの量産を開始しました。水素パワートレインシステムと主要コンポーネントの供給を予定しており、早くも米国、欧州、中国のトラックメーカーから受注しています。今週Nikolaは、この革新的な新技術をボッシュの燃料電池を搭載したトラックで体験できる試乗機会を提供します。

また、燃料を最初に電気に変換するのではなく、燃料を直接利用する水素エンジン向けのコンポーネントにも取り組んでいます。このテクノロジーはディーゼルエンジンに匹敵する性能を発揮します。さらに気候問題の観点では、グリーン水素を使用すれば、水素エンジンのメリットがさらに高まります。これは、大型長距離トラックや建設機械のようなオンロードそしてオフロードセグメントの商用車に適しています。水素エンジンのシステムプロバイダーとして、ボッシュは現在、ポート噴射と直噴システムの両方のソリューションを開発しています。今年後半には最初の水素エンジンの量産が始まると見込まれています。

世界中で水素技術への投資がゆっくりと加速し始めており、米国がすばらしい模範を示しています。公共側では連邦政府が水素インフラの構築を推進しており、米国全土でいわゆる水素ハブを設立するために70億ドルの予算を割きました。民間投資を含めると、利用可能な資金調達額は500億ドルを超え、さまざまな活動が活発になっています。ボッシュは北米でのクリーンエネルギー経済の推進支援に取り組んでおり、現在、複数のハブと協力して、私たちの水素製造と供給に関する専門知識を活かせるプロジェクトの特定を行っています。また、水素製造分野での事業の発展に伴い、これをサポートするための現地での製造を積極的に模索しています。

ボッシュはエネルギー効率の向上と電化を推進しています。一方、より持続可能なエネルギー源としての水素も追求しています。

タニア・リュッカート
ボッシュの全事業分野に共通するテーマは、徹底的にソフトウェアとデジタル化を活用して既存のソリューションを最適化し、新しいソリューションを生み出すことです。この分野におけるボッシュの専門知識は、もはや製品ポートフォリオにおいてニッチなものではなくなり、今ではほぼ全てのソリューションを支えるものとなっています。ボッシュは、モノとデータ世界の両方に精通している、数少ないハイテク・イノベーターのひとつです。現在、ボッシュでソフトウェア開発に従事している従業員は全世界で44,000人以上にのぼります。この分野でも原動力となるのは「Invented for life」の精神であり、実際にデータとアルゴリズムの力を活用することで、快適性、利便性、効率、持続可能性を高めています。

モビリティ分野においても、ソフトウェアは、より持続可能な未来のモビリティという目標を達成する上で重要な役割を担います。ボッシュはこのモビリティのビジョンに全力を傾けており、これを促進するためにモビリティ事業全体を再編しています。このために、これまで以上にモビリティに向けたソフトウェア企業として自社を位置づけ、事業部間での協働を強化しています。世界最大の自動車部品サプライヤーであるボッシュは、ソフトウェア・ディファインド・ビークル、つまり電動化、自動化、ネットワーク化され、効率、性能、利便性を向上させる幅広いデジタル・モビリティ・サービスを利用できる自動車への道をリードしています。

とりわけ、ソフトウェア・ディファインド・ビークル向けの便利で役に立つサービスの開発に関しては、可能な限り多くの専門知識を取り入れるべきであると確信しています。そこで、ボッシュは業界全体のパートナーと協力し、お客様のために新しい革新的なソリューションの実現に取り組んでいます。そのとても良い例として、運転支援テクノロジーを新しい方法で活用する便利なクロスドメイン車載機能を開発するために、アマゾン ウェブ サービスと協力しています。ここで、AWSの自動車・製造担当バイスプレジテント兼ゼネラルマネージャーであるWendy Bauer(ウェンディ・バウアー)氏とともに、私たちの取り組みについて詳しくお話したいと思います。

バウワー氏
お招きいただきありがとうございます。おっしゃるように、私たちはいくつかの非常にエキサイティングな新機能に取り組んでおり、業界や世界中の一般ユーザーとクラウドのメリットを共有できることを楽しみにしています。

リュッカート
たとえば、ボッシュがCESで初披露する全自動で豆から淹れるネットワーク化されたエスプレッソマシンを取り上げてみましょう。この装置自体が非常に優れており、スマートホーム部門でCESイノベーションアワードを受賞しました。そこで私たちは、この技術をドライバーの居眠り運転検知システムに活用しようと協力して取り組んでいます。

バウワー氏
あなたが用事を終えて帰宅の途につき、疲れ果てているとしましょう。あなたが疲れている可能性があると車両が認識した場合、どうなるでしょうか。クラウドとソフトウェア・ディファインド・ビークルが実現する機能を活用すれば、車両が先まわりしてあなたのニーズに対応することが可能になります。コーヒーを飲むために車を止めようかとドライバーが考える前に、Amazon Alexaのような車載音声アシスタンスが、カフェイン入りの飲み物で気分を気分転換するのはいかがですか、と尋ねてくるのです。CESが終わった後、「そうだね、トリプルショットのカプチーノがいいな」と答えたとしましょう。するとどうでしょう。10分後、玄関のドアを開けると、コーヒーメーカーが最後の泡を立てているというわけです。

リュッカート
また、帰宅して気分を一新することができない場合のために、ポイント オブ インタレスト アシスタントと呼ばれるものを開発しています。これは、車内モニターカメラを使って運転中のドライバーの視線を追跡し、特定のレストランや喫茶店など、ドライバーが見ているものを自動的に特定する機能です。

バウワー氏
リアルタイムの威力を発揮するクラウドのおかげで、ドライバー本人が見ている店舗の名前を特定する必要すらなく、そのお店が開店しているか、どのくらい混雑しているのかを音声アシスタンスが教えてくれます。立ち寄る価値があるのか、またはルート上の別の場所に行った方がよいのかどうか、リアルタイムで通知することで時間を節約し、不必要な運転を減らします。

リュッカート
どうですか?役に立つものばかりでしょう?この2つの機能は、このパートナーシップによってまもなく車両に搭載されることになる機能のほんの一部にすぎません。未来のモビリティを1社だけで実現できる企業がないことは明らかです。ですから、業界全体での協働が非常に重要となります。

バウワー氏
AWSでは業界の進歩と成功の鍵となるのは協働であると考えております。力を合わせることで、これまでよりも速やかに未来のモビリティを実現できることでしょう。リュッカートさん、お招きいただきありがとうございました。今後の展開が楽しみでなりません。

リュッカート
本当にそうですね。本日はご参加いただきありがとうございました。

引き続き車両とデジタル化に関する話題になりますが、CESでは、クラウドを活用してコストを削減し、持続可能性を高める2つの新しいモビリティサービスも発表します。ひとつは、バッテリー・イン・ザ・クラウドのサービスラインナップに新たに加わった「ユーセージ・サーティフィケート・トゥ・ゴー (Usage Certificate To Go:使用証明書)」です。これは、バッテリーのモデリングに関するボッシュの豊富な専門知識を活用した後付けソリューションです。このサービスは、OBD2ドングルからクラウドにアップロードされたバッテリーのデータを分析することで、バッテリーの健康状態を正確に判断し、バッテリーの寿命を最大20%延長できるようにします。もうひとつは、フリート運用者を対象とした、ボッシュの新しいクラウドベースの車両診断サービスです。これにより、より効率的に車両状態のモニターを可能にする予測診断や、車両の故障を回避してフリート稼働率を高める予防保守などの機能が利用可能になります。どちらの新サービスも最終的に車両の寿命を延ばし、資源利用の最適化に役立ちます。

デジタル化を活用したモビリティ全般の最適化に関して、eBike事業についてもぜひ触れたいと思います。私たちは電動二輪車のエクスペリエンスを高めるために、全面的にクラウドベースのネットワーク化を活用しています。たとえば、eBike Flowアプリ経由でのOTAアップデートを使用すると、eBikeシステムを最新の状態に保ち、新機能やアップグレードにより継続的に改善することができます。また、不審な動きがあればオーナーに通知し、盗難時の位置追跡も可能にする、eBikeロックやeBikeアラームソリューションなどの一連のデジタルサービスも、すべてネットワーク化によって支えられています。今回のブースでご覧いただけるように、ボッシュはeBikeの製品ポートフォリオを拡大し続けています。これは、何よりも私たちがeBikeを都市交通におけるひとつの実現可能で魅力的な移動手段にしようとしているからです。

ボッシュが提供する多くのデジタルサービスソリューションにとって、持続可能性の向上は追加的な利点かもしれませんが、それが主目的となるソリューションもあります。マンスエッティがお話ししたように、ボッシュのシステム統合ソリューションによって商業ビルのエネルギー使用量が削減されています。私たちはデジタル化を活用して、この分野での効率化も実現しています。たとえば、最近、エネルギー・ビルディングテクノロジー事業セクターでは、デジタルな商用ビル管理ソリューションに対して、欧州市場向けにエネルギー重視のサービスを新しく追加いたしました。モジュラー型でカスタマイズ可能、そして新しい建物にも古い建物にも対応するNexospace Energy Managerです。これは、クラウドベースのデータ分析を使用して、エネルギーの供給、分配、使用の効率を評価し、これに基づいて消費量削減のための具体策を提案します。ドイツ系国際的スーパーマーケットチェーン「REWE」では、ボッシュのソフトウェア提案に基づき、2,000店以上でエネルギー使用量が最大20%削減されました。

また、ボッシュが持つデジタルテクノロジーと低排出ガス生産に関する専門知識を組み合わせて活用することで、産業界における他社のカーボンフットプリント削減も支援しています。ボッシュがパートナーと組んで提供するデジタル脱炭素化計画サービス、Decarbonize Industriesの中核をなすのは、強力なAI支援データ分析です。従来、脱炭素化に向けたロードマップの作成には、数カ月、ときには数年かかることが経験上分かっています。しかし、ボッシュのデータ・ベースのアプローチでは、わずか数分で具体的な計画を作成することができます。サブスクリプションベースで利用可能なこのサービスは、すでにドイツの顧客に対して、効率向上によるCO2 排出量とコストの大幅削減に役立つ見込みであり、現在、他の地域でもこのプラットフォームを展開するための準備を進めているところです。

私たちのエネルギー問題は一晩で解決できるものではありません。しかしひとつ明らかなのは、行動しないわけにはいかないということです。地球のために、私たちは化石燃料への依存をやめる必要があります。しかも、それを早期に実現する必要があります。しかし同時に、非現実的な目標では成功は得られません。実現可能で、かつ手頃な価格のソリューションに焦点を当てる必要があるのです。

歴史が教えてくれたことがあるとすれば、私たちはエネルギーに対して無限の欲求があることです。しかしこれに伴い、カーボンフットプリントが増え続けるであろうことも避けられません。電化を推進し、クリーンで再生可能なエネルギー源へと切り替えて、エネルギー効率を最大化すれば、社会と地球にとって持続可能な形で増え続ける需要を満たすことができます。

ただし、それには努力、投資、そして適切な政策の枠組みが必要となります。もうひとつの重要な要素となるのはテクノロジーです。これに関してボッシュは、自動車、住宅、産業のフットプリントを削減するのに役立つ革新的な新しいソリューションにすでに鋭意取り組んでおり、またクライメートニュートラルなエネルギー供給の基礎を築いています。ボッシュは、さらに明るい未来を形づくる手段としてテクノロジーを活用することを約束します。今週、ボッシュのブースへお越しいただき、わたしたちの「Invented for life」なソリューションが、持続可能で無限のエネルギーをすべての人に提供する、というボッシュのビジョンに一歩近づくためにどのように役立っているのかをご覧ください。

ご清聴ありがとうございました。


このプレスリリースは2024年01月08日に Robert Bosch GmbH より発行されました。
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