タニア・リュッカート
ロバート・ボッシュGmbH取締役会メンバー
ポール・トーマス
ボッシュ北米法人社長
2025年1月6日
CES®にて
ダニー・マッカスキル(トライアルサイクリスト):
ご来場の皆さま、タニア・リュッカートとポール・トーマスを拍手でお迎えください!
タニア・リュッカート:
ありがとうございます。みなさん、ダニー・マッカスキルさんを応援しましょう! マッカスキルさんは、まさに二輪車の魔法使いですね。それに、あなたはデジタル技術がサイクリングの世界にもたらす可能性を実感できる立場にいますね。
ポール・トーマス:
マッカスキルさんは、10年、15年先を見据えた時、ご自分のキャリアに最も大きなプラスの影響を与えることになるデジタルソリューションは何だと思いますか?
ダニー・マッカスキル:
10年後、15年後ですか。そうですね、すでにいまも多くのテクノロジーを活用しています。ルートを計画したり、より良い結果を次に出したりできるようパフォーマンスを評価するためのデータ収集など。しかし、遠い将来の話でもよければ、もっと大きな影響を与えるものがあるでしょうね。
タニア・リュッカート:
それは何ですか?
ダニー・マッカスキル:
危険な技を試す前に入れ替われるAIベースの自分のロボットクローンです。そうすれば、体の回復にかかる時間が大幅に短縮され、誰もが避けたいと思うケガも大幅に少なくなるでしょう。ただし、ロボットだとは誰も気づかないように、私とそっくりに作ってもらう必要がありますけどね。ボッシュの皆さんなら、可能でしょう?
ポール・トーマス:
でも、マッカスキルさんの走りが特別なのは、ご自身で走るからではありませんか!AIは、トレーニングやデータ提供に役立ちますが、私たちはAIがご自身に取って代わることは想定していません。今日はまさに、そのことについてお話ししようと思っていたのです。
ダニー・マッカスキル:
なるほど、ぜひ聞きたいですね。
タニア・リュッカートとポール・トーマス:
みなさん、こんにちは。「CES 2025」へようこそ!
対面やオンラインでご参加いただき、うれしく思っております。
マッカスキルさんの自転車の話は今日私たちがお話ししたいテーマにとって、絶好の前置きとなりました。ボッシュはデジタル事業でどのように新境地を開拓しているのかというテーマです。特に私たちのeBike事業は、過去数年間どのようにボッシュ全体が進化してきたのかを示すには完璧な例です。ボッシュは、ハードウェアの世界をリードするイノベーターやメーカーから、モノの世界とデータの世界とのギャップをシームレスに埋める企業へと進化してきました。
15年前、私たちは最初のBosch eBike Systemを発売しました。当初、この事業はコードレス電動工具や電気モーターなど従来のハードウェア領域におけるボッシュの専門知識を結集することでスタートしました。当初は、単一のドライブユニット、バッテリー、LEDディスプレイで市場参入しました。それが今やボッシュは、eBikeのドライブシステムでは世界的なリーディングメーカーとなっています。さらに私たちは、スマートなコネクテッドソリューションのリーディングプロバイダーで、消費者のモビリティの楽しみ方やサイクリング体験に変化をもたらしています。
ここCESでは、Bosch eBike Systems向けのますます進化するデジタル関連の専門知識を紹介します。たとえば、ボッシュはバッテリーロックという新しい独自ソリューションを初披露します。バッテリーロックでは、お使いのスマートフォンやKioxのディスプレイから、使用していないeBikeのバッテリーをデジタルに無効にすることができます。率直に申し上げると、バッテリーはeBikeで最も高価で転売しやすい部品のひとつです。しかしバッテリーを無効にすれば、他の人にとっては価値のない部品です。つまり、盗難のリスクが低減し、安心感が増します。しかもBluetooth経由でバッテリーが自動的にユーザーを認識するため、スマートフォンをポケットから取り出さなくても、eBikeのロックは再び解除されるので、非常に便利です。
また、レンジコントロールと呼ばれるソリューションも発表します。これは、ボッシュのeBike Flowアプリの機能で、AIがサイクリストのルート計画をサポートします。eBikeライダーなら、目的地に到着する前にモーターがバッテリー切れにならないかと、非常に心配になるのはご存知でしょう。しかしレンジコントロールがあれば、バッテリーがどこまでもつのかを事前に、かつ正確に知ることができます。また、目的地に到着したときに、どのくらい充電量を残しておきたいのかを決めることもできます。これは、システム重量、搭載コンポーネント、ルートの標高、個別のライディング挙動などを考慮して、アルゴリズムが働きます。そのうえで、モーターによるアシストを動的に調整し、走行中のバッテリー効率を最大化します。何よりもすばらしいのは、ユーザーのライディングスタイルを学習するため、使えば使うほど正確性が高まることです。少なくとも、ボッシュのスマートシステムを搭載した二輪車に乗っていれば、もう航続距離に不安を抱く必要はなくなります!
eBikeの例が示しているのは、あらゆるレベルでソフトウェアとデジタルソリューションが私たちの事業に不可欠な要素になっているということ、そしてこの分野への多額投資が実を結びつつあるということです。2030年代初めまでに、私たちはソフトウェアとサービス領域で60億ユーロ以上の売上高達成を目指しています。もちろん、その多くにAIが採用される予定です。何といっても、私たちの従業員には約5,000人のAIエキスパートがおり、過去5年間で1,500件以上のAI関連の特許を申請しました。ボッシュは、AI関連の特許に関してヨーロッパ随一となっています。ご記憶にないかもしれませんが、ボッシュはCES 2020において、2025年までに私たちの製品ポートフォリオに含まれるすべての製品やソリューションにAIを搭載、または開発・製造にAIを活用することを目指す、と発表しました。そして私たちは、この目標をただ達成したのではなく、予定より2年も早く達成したのです。
しかし、ソフトウェアとAIによって実現されつつあるデジタル革命と成功は1つの柱にすぎません。もう1つの柱は、今年のCESのテーマである「Coded #LikeABosch」が示唆しているものです。コードというのは、すべてのデジタルソリューションの基礎です。今日はその基礎であるコードがどのように築かれたかをご紹介しましょう。もちろん文字通りのソースコードではなく、もっと根本的なものです。「Coded #LikeABosch」というのは、私たちがすべてのデジタル施策で採用している取り組みで、何よりも「Invented for life」という精神に基づいたものを表しています。それでは、その4つの重要なポイントを見てみましょう。
まず1番目のポイントは、「Coded #LikeABosch」は、特に安全性、利便性、効率性に関して、人々が何を必要とし、何を求めているのかを見極めることに重点を置いたボッシュの姿勢を示しています。これを踏まえて、私たちは目新しいだけでなく、実質的なメリットをもたらすデジタルソリューションを生み出しています。長年にわたるテクノロジーリーダーとして、私たちはたえず人々の生活を向上させる技術革新を追求してきました。ボッシュは、自動車の民主化に貢献したマグネトー式高圧点火装置の開発に携わり、また世界中で数え切れないほどの命を救ってきたエアバッグコントロールユニットや、ABS(アンチロック ブレーキ システム)、ESC(横滑り防止装置)などの画期的な車両安全システムを開発してきました。
現在、私たちはデジタルイノベーション分野でも同じことを行っています。たとえばボッシュのソフトウェアは、道路利用者に逆走車の危険を警告します。また、インテリジェントカメラは、制御不能になる前に煙や火を「発見」したり、車の前を横切って飛んでくるボールを検知すると、あとから子供が追いかけてくる可能性があることを警告したりします。その他、省エネのビル管理プラットフォームや、最先端のデジタルヘルスケアソリューション、そして安全で効率的な製造業務でも、ボッシュのソフトウェアが基礎となります。もちろんモビリティ分野でも、ボッシュのソフトウェアは将来のソフトウェア ディファインド ビークルへの道を切り開き、その過程でユーザーに多くの新しいメリットをもたらします。
今年のボッシュのブースで印象的な展示品となるのは、レースカーです。しかし、これは単なるレースカーではありません。これは最先端のル・マン・デイトナ・ハイブリッド車(LMDh)であり、NASCARのIMSAシリーズとACOのFIA世界耐久選手権の両方に出場することが認められた、初のハイブリッド駆動プロトタイプレースカーです。ル・マン、デイトナ、セブリングなどの耐久レースで雄姿をご覧いただけるでしょう。そして、このレースカーが特別な理由が2つあります。1つ目は、このLMDhが初めて2つの団体から世界的な認証を受けた、まったく新しい車両だからです。そして2つ目は、その中核にボッシュのハイブリッドシステムを搭載しているからです。もしあなたがモータースポーツファンなら、是非チェックなさってください。ハイテクなデジタル機能としては、新しいクラウドベースのテレメトリープラットフォームのRaceConnectがあります。このモジュールを使用すれば、コースを走る車両から生成されるデータの流れをシリーズ、メーカー、チーム、そしてファンにとって実用的な洞察にリアルタイムで変換し、データから最大限の価値を引き出すことができます。
さてこれから少し、別のトピックについてお話しさせてください。それはブレーキシステムについてですが、皆様がお考えになるような理由ではありません。このブレーキシステムのおかげで、あるドライバーが信じられないような逆境に直面しても、好きなことを続けることができたという感動的なエピソードをご紹介します。
その前に、本日は特別なゲストをお招きしています。ステージにお迎えする前に、彼が直面している課題とその克服を支えた、ボッシュのテクノロジーについて見てみましょう……。
ロバート・ウィケンス(レーシングドライバー)の登場
ポール・トーマス:
ウィケンスさん、CESにお越しいただき、ありがとうございます!本当に信じられないようなご経験をなさいました。ウィケンスさんは2022年にレースに復帰し、昨年はボッシュのブレーキ用ハンドコントロールシステムをデビューさせました。このシステムで何が可能になったのか、詳しく教えてください。
ロバート・ウィケンス:
ありがとうございます。お招きいただき、光栄です。事故後、初めてレースに復帰したとき、私はブレーキペダルにつながる物理的な接続をベースにしたシステムを使用し、実際にペダルを押していました。使えることは使えましたが、理想的とはいえませんでした。そのときボッシュが、LMDhクラスに供給している電動ブレーキシステムを採用したソリューションをわたしに提案してくれたのです。このシステムは最先端のブレーキ・バイ・ワイヤ技術にもとづいており、ソフトウェアを使用し、電気モータージェネレーターユニットと従来型の油圧ブレーキからのブレーキトルクのバランスをインテリジェントに調整します。ボッシュのモータースポーツチームは、このハードウェアを既存のシステムの一部に統合する方法を考案し、さらに重要なことには、ハンドコントロールで使用できるようにソフトウェアを適応して調整する方法を考案してくれたのです。その結果、フィーリングとレスポンスの点で、天と地ほどの違いが生まれました。そのおかげで、以前使っていたシステムよりも迅速に、より一貫してブレーキをかけられるようになり、安全のための高度な診断機能も備わりました。こうして、このシステムにより、他のドライバーと同じように車両をコントロールできるようになったのです。
ポール・トーマス:
つまり、ボッシュのテクノロジーによって、世界クラスのスピードと精度で車を操れるようになったというわけですか?
ロバート・ウィケンス:
その通りです。
タニア・リュッカート:
それは、ウィケンスさん自身、そしてご自身のキャリアにとって何を意味しますか?
ロバート・ウィケンス:
本当に世界がガラッと変わりました。以前と同じようにレースができるようになったからです。要するにプロとして好きなこと、つまり試合で競うことを最高レベルで続けられるようになったのです。また、ソフトウェア アーキテクチャのおかげで、システムが移し替えられることも気に入っています。今まで現代自動車のElantra N TCRに乗ってきましたが、今後、他のどの車にも移し替えられるのです。しかしそれ以上に、私が今後キャリアで達成することとは別に、ボッシュと一緒に体の不自由な次世代のレーシングドライバーへ一定の成果を残せることを、うれしく思っています。体が不自由でもこのキャリアを積めることを証明するだけでなく、そうした人々の夢の実現に役立つ実際のテクノロジーの開発と改良を支援したいと思っています。
ポール・トーマス:
今後、何かご予定はありますか?
ロバート・ウィケンス:
ええ、ワクワクするニュースがあります!2025年、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に、デビューすることになりました。No.36のDXDTコルベットZ06 GT3.Rで出場しますが、パワーと競争力をステップアップすることができるので、今から楽しみです。それだけでなく、ボッシュとのコラボレーションにより無限のチャンスが生まれ、このシステムの限界を押し広げ続けることができます。私たちのストーリーはまだ始まったばかりです。
タニア・リュッカートとポール・トーマス:
おめでとうございます、ウィケンスさん。本日はお越しいただき、ありがとうございました。信じられないほど感動的なストーリーですね。私たちも一役買うことができ、光栄に思っております!
これは「Invented for life」なテクノロジーと現実的なメリットを表現する本当にすばらしい例です。それと同時に、私たちがソフトウェア ディファインド ビークルへの移行に熱心に取り組む理由でもあります。ソフトウェア ディファインド ビークルは安全、効率、アクセシビリティを向上させる可能性を秘めています。それは、レース分野だけに限りません。つまり、ボッシュには、モビリティのエコシステム全体に関する広範な知識から得られたソフトウェアの専門知識があり、それが他社とは一線を画している点です。私たちはソフトウェア ディファインド ビークルのあらゆるレベル、そしてあらゆる領域で活動しているからこそ、頼りになるパートナーとなっているのです。
パートナーの話題がでたので、次にボッシュの取組みの2番目のポイントに移りましょう。デジタル活動に関して私たちは原則として協力的で、ハードウェアに依存しない、オープンなプラットフォーム戦略を追求しています。なぜなら基本的に、この分野では可能性を狭めるよりも広げる方が、多くの成果を達成できると信じているからです。
その結果、フォルクスワーゲンやその子会社のカリアドなど他社と提携し、あらゆる価格帯の車両に自動運転機能を導入することに取り組んでいます。そのために、ハードウェアに依存しないソフトウェアに注力しています。その1つが画期的なビークルモーションマネジメントで、これは私たちのブースでデモをご覧いただけます。こうして私たちは、あらゆる事業分野において、オープンでブランド横断的なプラットフォームを推進しています。たとえば、受賞歴のある産業オートメーションツールキットのCtrlX Automationなどです。このシステムはオープンソースのLinux OSで実行され、ハイテク工場アプリケーション用のアプリストアのような機能を果たします。これをさらに発展させるために、すでに100社を超えるグローバルパートナーが積極的に貢献してくれています。
あるいは、私たちのスマートホーム事業を例に取ってみましょう。ここ数年間、私たちは生活をいっそう便利で快適なものにするインテリジェントなネットワーク化ソリューションの開発を継続しつつ、他社の製品やプラットフォームとの互換性にも取り組んできました。結局、さまざまなブランドから自由に選択でき、すべてがシームレスに連携していれば、便利さと快適さも向上するのではないでしょうか?
ボッシュのブースではオープンスタンダードMatterとの互換性がある、ボッシュの新しいスマートホーム製品を展示しています。MatterはスマートホームやIoTデバイス向けの無料で利用できるネットワーク化規格です。ぜひボッシュのブースにお立ち寄りいただき、スマートな壁プラグ、ドア/ウィンドウコンタクト、ラジエーターサーモスタット、空気清浄機、空調ユニット、冷蔵庫などをご覧ください。また、新発売のボッシュ100シリーズ フレンチドア ボトムマウント冷蔵庫も展示しています。この冷蔵庫は、2025年にMatterを通じてAlexaと互換性を持つ予定です。ボッシュはAmazonと連携し、Matter対応の家電製品分野を前進させることに喜びを感じています。そしてこの発売は、Matter対応の家電製品を世界で初めて市場に投入した企業として、当社のリーダーとしての位置づけを強化するものです。
こうした柔軟で、モジュラー型のソリューションはすべて、みなさんの家をより快適に、エネルギー効率よく、安全なものにします。さらに将来的には、長年ご利用いただいている私たちのホーム コネクトアプリで家電製品を管理するだけでなく、AmazonやGoogle、Appleなどのパートナーシステムやハブを通じて、ユーザー自身がスマートホーム全体のすべてのMatter対応デバイスを操作できるようになるかもしれません。
このように協力的なアプローチをとることで、選択肢が増え、利便性が向上し、お客様のニーズにさらに応えられるようになるのです。
これが3番目のポイントにつながります。デジタル施策を展開するにあたり、ボッシュは新しいテクノロジーに対する信頼の構築を優先しています。このことはずっと前からお話ししてきたことですが、今まで以上に重要になっています。ボッシュでは信頼が得られなければ、多くのデジタル技術は広く受け入れられることも、採用されることもないということを、早い段階で認識していました。したがって、当社のテクノロジーのユーザーを重視し、何よりも人々の懸念にお応えすることがボッシュのデジタル戦略の重要な要素となってきました。
AIほど、こうしたことが重要になる分野はありません。このことが、ボッシュでは、安全、安心、堅牢で説明可能な方法でAIを開発することを優先してきました。数年前、私たちはAI倫理規定を策定し、これをこの分野におけるすべての開発活動の指針としています。また、ボッシュでは標準化された理解しやすいAIラベルを強力に推進しています。AIラベルは欧州AI規制法の中核となる考え方を具体化し、消費者に透明性をもたらすものだからです。これは、長い間人々がアナログ技術を信頼してきたように、デジタル技術も信頼できるものであることを納得してもらうための重要な手段であると信じています。そして、人間がAIテクノロジーの開発と応用の中心であり続けることを確実にする一助となることでしょう。
私たちにとって、こうした人間中心のアプローチとは、AI を使用して人々を支援し、生活を便利で安全に、そしてより良いものにすることができるアプリケーションの特定に注力することを意味しています。このアプローチを完璧に体現しているのが、CESで展示する私たちの新しい技術革新の1つである、マルチモーダルAI乳児ケアソリューションRevolです。これは「スマートホーム」と「AI」の両方のカテゴリーでイノベーションアワードを受賞しました。
赤ちゃんを育てたことのある方は、お世話にどれだけの時間と労力、そして不安が伴うかをよくご存知でしょう。そこで、テクノロジーがこの問題を解決してくれます。Revolはセンサー、カメラ、AIを駆使して赤ちゃんを見守ることができるスマートベビーベッドです。具体的には、赤ちゃんの心拍数や呼吸数をモニターします。ぬいぐるみや毛布で気道が塞がれたり、赤ちゃんの泣き声を検知すると、ソフトウェアが適切なタイミングで通知します。また、赤ちゃんがなかなか寝付かないときは、ベビーベッドが自動的に優しく揺れる機能を備えています。また、長いスパンでは、長期的に健康トレンドを記録したり、思い出に残る瞬間や成長の節目を画像に残したりすることもできます。
このソリューションは人間的な要素の代わりになることはできません。意思決定者となるのは親なので、育児には親のお世話とノウハウが必要になることは変わりません。ただ赤ちゃんの安全と健康を保つ手助けになるので、一緒に過ごす時間がいっそう楽しくなり、また心配事が減ります。まさにこうした点でAIは非常に有益であり、だからこそボッシュはテクノロジーへの信頼を構築するために、このようなアプリケーションに重点を置いているのです。その一環として、責任と透明性をもってユーザーデータを処理しています。Revolでは、送信するデータはすべてエンドツーエンドで暗号化され、ボッシュが管理するサーバーに保存されます。送信しないデータは、すべて個別のデータ暗号化キーを使ってローカルで保護されます。ただし、データを送信するかどうかの最終決定権はユーザーに委ねられます。Revolにはオフラインモードがあり、好みに応じて全データをご自分だけで所有することもできます。
このようにRevolがデジタルテクノロジーを駆使して親御様を助け、支援する方法は、ボッシュの取り組みの4番目、かつ最後のポイントへと完璧につながっていきます。私たちは特にAIに関して、こうしたテクノロジーを、人間の知性や能力に取って代わるのではなく、補完して支援するために活用することを目指しています。ここではAI、特にここ数十年でも最も革新的な技術開発のひとつである生成AIについて、もう少し詳しくご説明したいと思います。
AIの出現はそれ自体がすでにマイルストーンとなりましたが、生成AIへの飛躍はまさにコンピューターやインターネットの発明にも匹敵する技術革命です。生成AIはすべての人に扉を開きました。このテクノロジーの力と可能性を活用するには、もうAIのエキスパートである必要はありません。ボッシュでは現在、生成AIが組織全体にAIテクノロジーを急速に推進する役割を担っていると実感しています。その結果、生成AIによって、AIのスキルアップやAIガバナンスなどのテーマが非常に重要になりました。
ボッシュは生成AIをどう活用しているのでしょう?社内プロセスでは、業務の効率化と顧客サービス向上のためにさまざまな用途で生成AIを使用しています。たとえば最近、テキスト、動画、ソフトウェアコードの生成などで従業員をサポートするツールを導入しました。
生成AIは顧客向けソリューションでも新しい可能性を開拓するのに役立っています。ドイツの企業Aleph Alphaとの提携により、私たちは自然言語処理を活用した車両故障の電話に応答するAIベースのサービスを立ち上げました。多言語対応のエレベーター緊急通報サービスでは、AIベースのサービスを新たに開発し、停止したエレベーターに閉じ込められた人とサービスエキスパートとをつなぐサービスを確立しました。AIベースの音声ボットがリアルタイムで会話を翻訳し、生成AIがサポートを強化します。どちらの場合も、困っている人が電話をかければ、すぐに助けてくれる人が複数の言語で見つかるのです。
また、ボッシュのスマートオーブンSeries 8にも生成AIが搭載されています。こちらも、このCESでご体験いただけます。このオーブンは各製品に組み込まれたセンサー、カメラ、ミニ基盤モデルを使って自動的にレシピを識別することを学習し、各レシピに最適な温度と時間を設定します。必要なのは食材のセットだけで、あとはオーブンにお任せです。この製品も自動的に経験を積んでユーザーの好みを学習し、使用すればするほど優れた製品になります。
これがAIのすばらしい点であり、AIの可能性に私がとてもワクワクする理由です。しかしながら正直に言うと、社会一般では未だ明らかにAIに対してバランスのとれた視点が欠けていることを、もどかしく感じています。ある人は、AIに対して根強い恐怖や誤解があり、ゆえに人々がAIに乗り気ではなかったり、場合によっては真っ向から拒絶したりする原因となっています。一方で、AIの強力な支持者は正当な懸念であっても軽視し、AIができることを過信する傾向があります。よくあることですが、現実はその中間にあります。賢く責任をもって使用すれば、AIは人間の知能と連携して、人間の知能を補完する貴重なツールとなります。生活でも仕事でも、アシスタントや仲間のような存在になりえます。しかしAIは人間から独立して動くことも、人間の身代わりになれるよう設計することはできませんし、そうすべきでもありません。だからこそAIスキルの向上が非常に重要です。
これはテクノロジーに対する世界的な意識を測るために私たちが毎年実施している調査Bosch Tech Compassの結果とも一致します。最新調査ではAIに関するテーマについて人々に意見を尋ねました。その結果、興味深いことに多くの人がAI関連のスキルの構築が重要だと考えていることがわかりました。たとえばAIに関連する事柄では、世界中の回答者の82%が知識を習得することを計画しています。さらに63%がAIは学校で独立した科目として教えるべきだと考えています。これは人々がAIのようなスキルはますます重要になり、早期に習得すべきだと考えていることを意味します。対照的に、雇用主はAIスキルの重要性をまだ十分には認識しておらず、職場でAIのトレーニングを受けたことがあると回答した人は約4分の1のみでした。
ボッシュではAIスキルの問題を非常に真剣に受け止めています。これまで、私たちはさまざまな従業員のスキルアップの取り組みを立ち上げてきました。その中には、社内の全員が利用できるAIアカデミーという名前の専用の学習ポータルがあります。あらゆる知識レベルの従業員を対象に、オンラインと対面の両方で幅広いトレーニングの機会を提供しています。これまでに6万5,000人以上の従業員がAIおよび生成AI関連のトレーニングを修了しました。
ボッシュがこうした新しいスキルをどのように活用できるのか、より一般的には、人間の専門知識に取って代わるのではなく、補完するためにAIをどのように活用できるのか、を積極的に示している分野の1つが、製造分野です。ボッシュはテクノロジーを活用して製造業務を最適化・合理化し、その過程でより安全、効率的、正確になるようサポートする、いわゆる産業用AIの先駆者であると広く見なされています。
要するに「Coded #LikeABosch」とは、人々を補助、支援し、人々に利益をもたらすように設計されたデジタルソリューションであるといえます。これは、グローバル市場全体での私たちのポートフォリオにおいて、さらには私たちの成長への努力において、ますます重要な要素となっています。
もちろんこれには米国も含まれており、さらに広く展開できることを嬉しく思っているデジタルイノベーションのひとつが、「逆走警告システム」です。ボッシュのクラウドベースのシステムは、高速道路の入口や出口のランプに近づく車両を追跡します。匿名化されたデータを使用して、システムは車両が許可された進行方向に移動しているかどうかを判断します。逆走している場合は、ドライバーに警告が発せられます。また、他のドライバーに警告を送信し、接近する車両が逆走していることを知らせることもできます。米国連邦高速道路局によると、逆走による死亡事故は2022年に700件を超え、5年間でほぼ60%増加しました。デジタルサービスがこうした事故の削減に真の価値を提供できる例がここにあります。
だからこそ、私たちはCESで、SiriusXM Connectと協力して、ボッシュの逆走警告機能をSiriusXM Connectの新しいモバイル安全アプリに導入する可能性があるとお伝えできることを非常に嬉しく思っています。これにより、何百万人もの新しい消費者が、逆走運転の警告を発するこのテクノロジーを利用できるようになります。
また、私たちはコラボレーションを通じて、このテクノロジーをより多くの車両やスマートフォンに導入する取り組みも積極的に進めています。近いうちに、さらに多くの発表ができることを期待しています。
その他の事業分野においても、引き続き米国は当社の成長に向けた主要な戦略拠点であり、ボッシュはここ米国で多額の投資プログラムを継続しています。数カ月前、ボッシュ史上最大の単独取引として、ジョンソンコントロールズと日立から、住宅用および小規模商業用HVAC事業を80億ドルで買収する計画を発表しました。これは今年中に実現する見込みです。
私たちは米国における半導体製造の強化にも貢献しており、2026年にカリフォルニア州ローズビルの工場でSiC(炭化ケイ素)チップの生産を開始する計画に引き続き取り組んでいます。先月発表した通り、このプロジェクトはCHIPS法(「CHIPSおよび科学法」)に基づく支援を受けており、これによりローズビル拠点を世界クラスの半導体製造拠点へと変えていきます。
それだけではありません。私たちは電動工具と家電製品の分野で、米国市場に合わせた複数の新製品の発売を計画中です。
これから、米国のボッシュではエキサイティングな出来事がたくさん起こります!まもなく、ここにいる皆様はさらに多くのことを耳にされることでしょう。これまで見たことのなかった場所で、私たちを目にすることにもなるでしょう。特に驚かせる事が1つあります……
ボッシュは当社史上初めて2月9日の「ビッグゲーム」に広告を出します!このことをCESで発表することができでうれしく思っております。
今後数週間のうちに詳細を発表いたしますので、どうぞお楽しみに。試合中はボッシュにもご注目ください!
未来に目を向けると、デジタル技術が新たな可能性を大きく広げていることがわかります。とりわけAIと生成AIは、適切なアプローチを取れば、あらゆる分野において、快適性、効率、コスト削減、持続可能性の向上に役立つ可能性を秘めています。
私たちは、こうしたアプローチでは人間に焦点を当てるべきだと信じています。特にAIに関しては、私たちが今回説明した4つのポイントが、バランスのとれた現実的な視点を育むために非常に重要であると考えています。また、この4つのポイントはこのテクノロジーが最も得意とすること、つまり人間の作業を支援、補助、強化するために利用する上での鍵となります。
ボッシュでは、かなり前にハードウェアのみを扱うことをやめ、デジタル分野で常に新境地を開拓しています。しかしこのすばらしい新しいデータドリブン型の世界でも、本質的なモチベーションは変わっていません。「Invented for life」の理念に沿って、これまで通りテクノロジーを活用して人々の生活をより良くすることに取り組んでいるからです。今週、私たちのブースにお越しいただき、有益な「Coded #LikeABosch」のデジタルテクノロジーがどのようなものか、ご自身の目で是非お確かめください。
ご清聴ありがとうございました。
このプレスリリースは2025年1月6日に Robert Bosch GmbH より発行されました。
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