本稿は実際の内容と異なる場合があります。

  • みなさま、本日はボッシュ・グループの年次記者会見をご視聴いただきありがとうございます。新型コロナウイルス感染症への防止策として、本年はライブストリーミングでの実施とさせて頂きます。
  • 新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るっています。みなさま、またみなさまにとって大切な方々の健康と安全を祈念しています。感染によって命を落とされた方へのご冥福をお祈りするとともに、現在治療をされている方々に心からお見舞いを申し上げます。また、医療従事者のみなさまのご尽力に、心から敬意を表します。
  • 私たちは「We are Bosch」の行動指針に基づき、「Invented for life」を体現する製品を提供しています。それは、このウイルスを阻止するために尽力するということも意味しています。ボッシュでも、分子臨床検査プラットフォームVivalytics向けに、新型コロナウイルス感染症の迅速検査システムを開発しました。完全自動で、わずか2時間半で結果が判明します。この迅速検査は現在、欧州にて利用が可能です。また、45分未満で結果が判明するさらに高速の検査システムも、開発の最終段階に入っています。
  • また、従業員の感染防止にも努めており、従業員向けにマスクを製造しています。ボッシュの専用工作機械部門によるマスク製造に必要となる製造ラインの設計は、第三者に無償提供することが可能です。ドイツと米国では、工場に勤務する従業員向けに消毒液も製造しています。
  • ボッシュでは、従業員の健康を最優先事項として捉えています。日本においても従業員の感染防止に向け、初期の段階から様々な最高水準の感染対策を取り入れています。例えば、消毒液の提供や一般的な安全衛生指導、体温測定、ボッシュのロケーションで勤務する際に着用するマスクの支給などの衛生対策を実施しています。また、会議や研修、食堂において、三密の環境を防ぐ、もしくは減らすように努めています。国内外の出張も可能な限り削減し、オンラインでの会議が標準となっています。
  • 対策は、ボッシュのロケーション以外でも取り入れています。可能な限り在宅勤務を推奨しています。最も注意が必要な時期においては、6,700名の従業員のうち、最大3,000名が在宅で勤務していました。育児や介護が必要な従業員に対しては、特別有給休暇の付与も行いました。
  • コロナウイルスの拡大により、私たちの働き方は大幅に変化しました。私たちはこのような変化に対する準備が既に整っており、スムーズな対応が出来ました。これらの新しい措置のうちいくつかは、ニューノーマルでも残していきます。例えば、在宅勤務は今年8月より、従来の月間所定労働時間の月約25%から50%までに上限を引き上げます。
  • どのような状況においても、我々のスローガンである「Invented for Life -人と社会に役立つ革新のテクノロジーを生み出す」という姿勢を忘れません。約60か国で働く約40万人の従業員が一丸となって、新型コロナウイルス感染症と闘っています。

2020年にグローバルでカーボンニュートラルを達成
  • 私たちにはほかにも、食い止めなければいけない地球規模での課題と対峙しています。その一つが、気候変動です。世界気象機関によると、地球温暖化は依然として進行しており、大気中の二酸化炭素濃度や海水面の温度、水位のいずれも上がり続けているといいます。地球環境を健全に保つことが出来なければ、長期的にビジネスを成功させることは出来ません。地球温暖化を食い止めるためにも、企業が率先して温室効果ガス排出量の削減に取り組まなければならないのです。
  • その取り組みのひとつとして、ボッシュは2019年の年次記者会見で、2020年に全世界の400超の拠点において、カーボンニュートラルを達成すると宣言しました。本日、ここで結果をご紹介します。ドイツでは、2019年に全拠点においてカーボンニュートラルを達成しました。そして2020年、全世界でカーボンニュートラルを達成します。カーボンニュートラルの達成に向け、ボッシュでは4つの方法を採用します。ひとつ目は、エネルギー効率の改善、ふたつ目は再生可能エネルギーの自家発電の拡大、三つ目はグリーン電力調達の拡大、最後が、信頼性の高い認証基準を通じて残りのCO2排出量をオフセットする方法となります。
  • 2030年までに、前者の2つの方法により、カーボンニュートラルの質を向上させます。後者の2つの方法は、近い将来に効果的な措置となります。カーボンオフセットの割合は、2020年には当初の計画よりも大幅に低下し、50%から25%にまで引き下げられる予定です。言い換えれば、私たちが取っている対策の質的向上が、予想以上に進んでいると言えます。

AIへの投資
  • 未来への投資、という点においては、今後のテクノロジーのカギとなるAIへの投資も積極的に行っています。我々は、AIは安全、ロバスト、かつ説明可能で、人間が常にコントロールすべきものであると考えており、2020年1月には、AIの倫理指針を発表しました。2025年までに、ボッシュのすべての製品にAIを搭載する、または開発もしくは製造段階でAIを活用することを目指しています。AIの主要拠点として、2017年にドイツにBCAI(Bosch Center for Artificial Intelligence)を立ち上げ、現在はグローバルで7カ所に拠点を有しています。
  • 日本においても、現在はAIに関する独自研究に加え、国内の大学や研究所との共同研究関係の構築や企業との連携を進めています。また、グローバルでAIに精通した従業員を今後2年間で2万人に拡大します。これは、現在の20倍に値します。グローバルで展開する研修プログラムは、日本でも今年後半より実施する予定です。
  • ここからは、弊社取締役副社長のリーステラーより、2019年のボッシュ・グループのグローバルならびに日本国内の業績についてご紹介いたします。

グローバルでの2019年の業績
  • まず初めに、先日発表された2019年のボッシュ・グループのグローバルでの業績をご紹介させて頂きます。自動車市場の低迷に反して、売上高は前年と同水準を維持し777億ユーロとなりました。支払金利前税引前の営業利益は33億ユーロとなりました。また、売上高の約8%に相当する61億ユーロを、研究開発費として投じました。これらは、ボッシュの目指す未来のモビリティPACE(パーソナライズ化、自動化、ネットワーク化、電動化)における技術革新や、IoTやAIのような将来の成長分野への投資が含まれています。2019年12月31日現在、当社は世界中で約40万人の従業員を雇用しています。そのうち約7.3万人が研究開発に従事し、3万人のソフトウェア技術者を擁しています。

日本のボッシュ・グループ、2019年の売上高は前年比1.0%増の3,300億円
  • 2019年の日本における第三者売上高は、約3,300億円でした。グローバルの自動車市場が縮小し、厳しい環境となりましたが、日本においては前年比約1.0%増となりました。なお、アジアパシフィック地域はボッシュ・グループにおいて約30%の売上を計上しており、重要な役割を担っています。
  • ボッシュは、4セクター制でビジネスを展開しています。グローバルでは、モビリティ ソリューションズ事業が売上高ベースで60%を占めています。日本においては、モビリティ ソリューションズ事業が占める売上高の割合が、90%を占めています。なお、モビリティ ソリューションズ事業の2019年の売上高は、前年比で1.5%増加しました。主に、横滑り防止装置(ESC)や先進安全運転支援分野を含むセーフティシステム向け製品、インフォテインメント製品が売上に貢献しました。
  • なお、ボッシュの全世界における日系自動車メーカーへの売上は、2013年からこれまで前年比、年平均2桁の割合で増加しています。2019年の前年比増加率も、10.2%と二桁成長を遂げました。なお、この数値には、二輪車メーカー、農建機メーカー、ティアサプライヤーに対する売上を含んでいます。これは、日系自動車メーカーの世界での自動車生産台数が前年比でやや減少したことを踏まえると、日系自動車メーカーに対する当社の売上が拡大したことを意味しています。
  • 日本の自動車メーカーは、自動車市場において重要な役割を担っています。世界で生産される自動車の30%が、日系自動車メーカーにより提供されています。日系自動車メーカーが国内で、そしてグローバルで魅力的な自動車を提供するために必要となる部品やソリューションを提供することが、我々の使命です。
  • 2020年は、自動車業界にとって厳しい1年になると予想しています。状況が大変流動的であることから、現時点では業績見通しの公表は控えさせて頂きます。
  • それでは、メーダーより日本国内の事業のハイライトを具体的にご紹介いたします。

自動化:側方レーダーを使った運転支援システムの追加により交差点での事故発生を最大41%削減
  • まずは、日本の主力事業であるモビリティ ソリューションズ事業における業績のハイライトをご紹介させて頂きます。ボッシュでは、安全、サステイナブルで魅力的なモビリティを、PACE(パーソナライズ化、自動化、電動化、ネットワーク化)を通じて追及しています。本日は、自動化、電動化、ネットワーク化におけるハイライトの一部をご紹介させて頂きます。
  • まずは、自動化についてご紹介します。ボッシュが自動化を進める最大の理由、それは交通事故を限りなくゼロに近づけるためです。世界保健機関によると、毎年135万人が交通事故により命を落としています。また、2,000万人から5,000万人もの方が、傷害を負っています。日本における交通事故による死者数は減少傾向にあるとは言え、年間3千人を超える尊い命が失われています。
  • ボッシュは当初から車両の安全性を常に重視してきました。横滑り防止装置(ESC)は1995年に欧州連合(EU)で導入されて以来、1万5,000人の命*1を救いました。今年は、ESCの量産開始から25 周年となります。ボッシュは現在までにESCを2億5,000 万台以上生産してきました。そのうち、日本だけでも2,100万台を生産しています。
  • ボッシュの試算によると、ESCとSAEレベル1の運転支援システムを組み合わせることで、現在ドイツ国内で起きている交通事故*2の最大45%*1、3を防ぐ、もしくは衝突被害を軽減することが分かっています。さらに、SAEレベル2以上の部分的な自動運転により、交通事故*2の26%* 1、3を防ぐ、または衝突被害を軽減できると試算しています。
  • 日本でも同様の効果が想定されています。交通事故総合分析センター(ITARDA)の調査によると、衝突被害軽減ブレーキ(AEB)を搭載した車両は、搭載していない車両に比べ、事故発生率が52.9%*4 低いことが確認されています。現在、これらのシステムにはフロントセンサーのみが搭載されています。このほかに、さらなる事故削減効果が期待される運転支援システムとして、側方レーダーを活用したシステムがあります。側方レーダーは検知範囲がフロントレーダーよりも左右ともに15度広く、交差点での事故発生防止に効果的です。交差点での自動車事故は世界共通の課題です。たとえば、EUと米国では、交通事故*2の約25%が交差点で発生しています。日本ではさらに多く、その割合は37%*5に達しています。このため、交差点でのAEBの評価が、ユーロNCAP(The European New Car Assessment Program)では今年から、JNCAP(Japan New Car Assessment Program)では2023年から評価項目に追加される予定です。
  • ボッシュの側方レーダーを活用したシステムには、AEBだけでなく発進防止機能などの様々な機能があります。これらの側方レーダーを活用した運転支援システムの効果をさらに高めるため、ボッシュはこれらのシステムが交差点での衝突事故をどの程度防ぐことができるかについて、ドイツ国内で調査を行いました。
  • この事故調査によると、側方レーダーを使ったAEBと発進防止機能によって、現在交差点で発生している交通事故*1を最大で41%*3、6防ぐ、もしくは衝突による被害を軽減できる可能性があることがわかりました。この調査から、各機能の有効性も明らかになりました。発進防止機能は、自転車やバイクなどの二輪車を巻き込むことが多い低速での衝突防止に非常に有効です。これは、衝突に対して無防備な致死率の高い道路利用者を守る手段として意義があるものとして捉えています。発進防止機能により、4件に1件の重大な衝突事故を防ぐ可能性があります。一方AEBは、特に他の乗用車など車両との高速での衝突回避に有効です。
  • 側方レーダーの搭載を後押しする背景としてNCAP対応の他、SAEレベル2のハンズオフ機能があります。側方レーダーは車両の前後左右4カ所に搭載することで360度センシングが可能となります。ボッシュの試算によると、2020年から2027年までの7年間にわたり、側方レーダーの市場成長率は年率15%、すなわち現在の2.6倍まで拡大すると見込んでいます。
  • ボッシュは今年、新世代の側方レーダーの量産を開始します。この77 GHz(ギガヘルツ)帯と高周波レーダーにより、現行のサラウンドセンサーの製品ポートフォリオを補完し、より高度な検知を可能にします。
  • ボッシュは長年にわたり、自動運転向けセンサー技術、超音波、レーダーやカメラセンサーの開発から製造までを自社で行っており、2019年にはADAS部門の売上高が前年比12%増の約20億ユーロに達するなど、自動化分野におけるマーケットリーダーとなっています。
  • ボッシュでは、四輪車だけでなく二輪車向けにも、前方および後方レーダーを使った先進的な安全運転支援システム「アドバンスト ライダー アシスタンス システム(ARAS)」の開発を進めています。アダプティブ クルーズ コントロール(ACC)、衝突予知警報、死角検知の3つの機能で構成するARASは昨年、日系二輪車メーカー・川崎重工業のモデルへの採用決定が発表され、2021年からのシステム量産の開始が決定するという、大きなマイルストーンを達成しました。また、ARASは本年の量産開始に向けて開発を進めています。その一環として、昨年3月に開始した二輪車向け安全運転支援システムの公道試験の対象エリアを、当初の東京都、神奈川県、栃木県の高速道道路に加えて埼玉県にまで拡大し、日本の道路環境により正確に対応したシステム開発を進めています。

    ※1 Bosch Accident Researchでの検証結果(2019年・2020年)
    ※2 乗員のけがを伴う乗用車による交通事故
    ※3 車両へのシステム搭載が浸透していると仮定した場合の数値(搭載率100%)
    ※4 衝突被害軽減ブレーキ(AEB)の対四輪車追突事故低減効果の分析結果(ITARDA 2018年)
    ※5 EU: 欧州11か国のERSO-CARE 各国データ、米国: 米国運輸省道路交通安全局Traffic Safety Facts(2017年)、米国運輸省 HS 812 384、日本:平成29年中の交通事故の発生状況(警察庁交通局2017年)
    ※6 Bosch Accident Researchでの検証結果(2019年/2020年): GIDASデータベース(2005年-2019年)およびドイツ連邦統計局データ2018年 (DESTATIS F8 R7)

電動化:ボッシュ製48Vマイルドハイブリッド向けコンポーネントを搭載した日系自動車モデルが登場
  • 現在世界では、13億台以上の自動車が道路を走行しています。地球の気候変動や都市の大気環境に配慮したサステイナブルなモビリティを提供するには、排出量の削減に注力する必要があります。我々は、2030年に新車登録される車両の3台のうち2台は、ハイブリッドのオプションの有無にかかわらず、依然としてディーゼル車またはガソリン車になると予測しています。サステイナブルな意思決定を行うためには、透明性およびすべてのパワートレインに対する影響について詳細な検討が必要です。カーボンニュートラルについて、Well to Wheel(燃料採掘から車両走行まで)で考えなければならないのです。すべての可能性を活用するため、ボッシュではパワートレイン技術の未来に対してオープンなアプローチを取っています。そのため、ボッシュでは高効率の内燃機関からeモビリティ、燃料電池に至るまでの様々なパワートレインを、手頃な価格で提供することを念頭に置いた開発を進めています。
  • ボッシュでは過去数年にわたり、eモビリティの開発に毎年約4億ユーロを投資するとともに、既に世界中で50超の顧客向けeモビリティ向けプロジェクトを実現し、各国のニーズに合ったソリューションを提供してきました。日系自動車メーカー各社でも積極的に電動化が進められていますが、当社の48Vマイルドハイブリッド向けコンポーネントも日系自動車メーカー向けに量産を開始し、2020年春に欧州で販売が開始されたモデルに搭載されています。
  • 近年、自動車市場には電気自動車を活用した新たなモビリティサービスの提供に取り組む、新規プレイヤーが参入しています。それにともない、コンポーネント提供だけにとどまらず、様々なコンポーネントやシステムを組み込んだソリューション提供に対する需要が高まりを見せています。ボッシュでは、従来の自動車部品やサブシステムのサプライヤーとしての役割に加え、MSP(モビリティサービスプロバイダー)なども対象に含めたモビリティビジネス全般でのリーディングカンパニーを目指しています。
  • 電動化におけるひとつのソリューションとして、ボッシュは2019年にローリングシャシーの提案を開始しました。電動化において、我々ほど多岐にわたるソリューションを展開している企業はありません。ローリングシャシーは、ボッシュの電動パワートレイン、電動ブレーキシステムや電動ステアリングなどを搭載した、電気自動車向けのプラットフォームです。ボッシュはローリングシャシーの開発を、シャシーおよび自動車機器のスペシャリストであるBenteler社とともに進めています。こちらの映像でご覧頂けるように、駆動が可能な状態でご提供できることから、車両の開発における時間短縮や効率性の向上に貢献します。
  • また、ボッシュとBenteler社は、Pininfarina S.P.Aと戦略的提携を締結しました。3社の提携により、電気自動車のプロトタイプの構築から生産開始までに至るまで、開発工程すべてを網羅することが可能になります。電気自動車メーカーは、様々なバリエーションや設計をプロトタイプに迅速に実装することができ、時間と費用の削減につながります。
  • ボッシュではまた、燃料電池パワートレインの開発も積極的に進めています。ボッシュでは、2030年には、新規登録されるトラックの8台のうち1台が、燃料電池を搭載すると見込んでいます。我々は、同市場においてマーケットリーダーのポジションを確立することを目指しています。ボッシュは現在、パートナーであるPowercell社と燃料電池のスタックの開発を進めており、2022年の市場投入を予定しています。燃料電池のスタックに加え、燃料電池システムの開発を米国のNikola社と進めています。まずは商用車向けに燃料電池システムの量産を開始する予定です。また、日本のアプリケーションおよび市場向けに、スタック以外のコンポーネント開発も進めています。例えば、電動エアコンプレッサー、水素インジェクター、再循環ブロワ、コントロールユニットなどを、燃料電池コンポーネントの製品ポートフォリオとして有しています。

ネットワーク化:コネクテッドモビリティソリューションズ事業部設立
  • 次に、ネットワーク化についてご紹介します。2025年までに、グローバルで4.7億台の車がネットワーク化されると予測されており、ネットワーク化には計り知れないビジネスチャンスをもたらすとの期待が広がっています。日本においてもこのビジネスチャンスを獲得すべく、従来、バレーパーキングの専門組織としていたチームの体制を拡大し、2020年にコネクテッドモビリティソリューションズ事業部を立ち上げました。同事業部は、当社が展開するネットワーク化にまつわるソリューションを統合し、包括的なサービスを提供することを可能とします。ソリューションの一つとして、「OTA (Over the Air)」が挙げられます。スマートフォンのシステムアップデートのようにインターネットを介して新しいソフトウェア・ファームウェアを配布・アップデートします。また、電気自動車用バッテリーの寿命を20%延長するサービス「バッテリー・イン・ザ・クラウド」や、スマートフォンを車両のカギとする「パーフェクトリー キーレス」などもあります。
  • なお、パーフェクトリー キーレスに関しては、2019年の年次記者会見で、車両とスマートフォンの通信にBluetoothを採用したデモをご覧頂きました。2020年は、既に一部のスマートフォンで利用可能な通信技術である超広帯域(UWB)無線通信での提供も可能となりました。UWB通信を利用することで、スマートフォンの位置をより正確に特定し、車両との通信における安全性を向上します。

ネットワーク化:2020年2月よりパーキングロットセンサーの提供が可能に
  • ボッシュとダイムラーは、シュトゥットガルトのメルセデス・ベンツ博物館の駐車場に設置した自動バレーパーキングにおいて、当局より世界初となる自動運転レベル4(SAEレベル4)の認証を取得しました。ボッシュでは、駐車スペースを探すプラットフォーム提供から自動バレーパーキングに至るまで、ネットワーク化を通じて駐車にかかるドライバーの負荷を削減する様々なソリューションを提供しています。日本においても、駐車にまつわるネットワーク化が進展しています。そのひとつとなるのが、2020年2月より提案を開始しているパーキングロットセンサー(PLS)です。
  • 「アクティブ パーキング ロット マネジメント」により、ドライバーは駐車スペースを探すことがより簡単に、また駐車場の管理者は駐車スペースの有効活用ができるようになります。そのシステムのカギを握るのが、PLSです。PLSは、どの駐車スペースが空いているのかをネットワークを通じてリアルタイムに通信します。PLSは既に、ドイツ、フランス、イタリアのスマートシティ プロジェクトに採用されています。
  • PLSは日本でも提供可能です。ボッシュは2020年2月より実証実験を実施しており、センサーを提供しています。仏・Kerlink社とSynox社がゲートウェイとネットワークサーバー、アプリケーションを提供し、株式会社ミライトが保守運用を含めたサービスを担当することでPLSの提供を可能としています。
  • PLSを駐車スペースに設置すると、センサーが空き状況を検知します。そのセンサーからの情報が無線でサーバーに中継され、リアルタイムでマップデータに取り込まれます。ドライバーはインターネットなどからこのマップデータにアクセスし、空きスペースの予約ができます。こうして、駐車スペースの検索がより簡単になり、ドライバーが駐車スペース探しにかける時間を短縮します。また、駐車スペースを探す際に排出するCO2の削減にも貢献し、環境の保護にも寄与します。
  • なお、PLSは、特殊な接着剤で地面に装着するだけと設置が非常に簡単です。道路を掘り起こして設営する駐車場と比較すると、工期の短縮、工事コストやメンテナンスコストの大幅な削減に寄与し、駐車場管理者の負担を軽減します。

ネットワーク化:SBI損害保険株式会社がボッシュのeCall用デバイス「テレマティクスeCallプラグ」を活用したサービスの提供を開始
  • ネットワーク化のトピックのひとつとして、ボッシュでは、自動緊急通報システムeCallに対応する後付けデバイス「テレマティクスeCallプラグ」を開発しています。このプラグには、3軸の加速度センサー、マイクロコントローラー、センサーが検出したデータを計算するアルゴリズムが組み込まれており、衝突による衝撃を検知します。加えて、ブレーキ、加減速、ハンドル操作といった運転行動データを検知するという、特徴的な機能も有しています。これらの情報をもとに、保険会社はモビリティサービスの提供が可能となります。ボッシュでは、2019年よりSBI損害保険と実証実験を進めていましたが、このたび、SBI損保が、保険サービス向けにこのデバイスを正式採用することを決定しました※7
  • SBI損保の加入者は、希望に応じてデバイスの使用が可能となり、スマートフォン専用アプリと連携させることにより、安全運転をサポートするためのサービスを受けることができるようになります。ドライバーの安全確保に貢献するサービスが順次に提供される予定です。サービスのひとつとして、デバイスが事故の発生を検知すると、ドライバーのスマートフォンに緊急連絡先が表示され、タップするだけで即時にレッカーサービスへの緊急通報が可能となります。
    ※7 SBI損保は2020年中にサービス開始予定

IoT:世界有数のAIを駆使したIoT企業へ
  • これまで、モビリティ ソリューションビジネスにおけるネットワーク化の進展についてご紹介してきましたが、ボッシュが進めるネットワーク化はモビリティだけではありません。モビリティから製造業、ロジスティクス、スマートホーム、農業に至るまでの、多岐にわたるビジネスを展開しています。ボッシュは、世界有数のAIを駆使したIoT企業に成長することを目指し、革新的なプロジェクトを推進し、デジタルサービスにおける新たなビジネスチャンスを切り開いています。
  • その勢いをさらに高めるため、2020年1月、ボッシュはモノのインターネット化を中核とした活動を集約する新たな子会社Bosch.IOを設立しました。Bosch.IOには約900名超の従業員が在籍し、ボッシュが擁する約3万人のソフトウェアエンジニアやAIエキスパートと共同でプロジェクトを展開しています。
  • 日本においてBosch.IOは、事業部のひとつとして、センシング/IoT/AIを活用した新事業、コネクテッドビルディングや日本初の病害予測AIが特徴のスマート農業サービスPlantect を展開しています。本日は、特に大きく発展し、前年比プラス成長を遂げたPlantect についてご紹介します。
  • 日本は、農業者の減少による労働力不足が深刻化しています。また、地球温暖化などの影響により変化する病害への対応にも迫られています。ボッシュでは、これらの課題解決に向け、2017年よりハウス栽培向けの環境モニタリングと、AI を活用した病害予測サービスを提供するPlantect を販売し、ハウス栽培における生産性の向上や作物の品質向上に寄与しています。2019年には、主に三つの進展を遂げました。ひとつ目は、病害開発のスピード化です。ボッシュでは、約200棟のハウスのデータとボッシュの強みであるAIの技術を用いて病害アルゴリズムを開発しています。現在では、約1年で新たな病害に対するアルゴリズムを開発できるようになりました。現在は3品目8種の病害予測を提供しています。
  • ふたつ目は、国内での市場拡大です。国内での市場拡大は、エンドユーザーの増加だけでなく、企業や多数の温室を持っている団体での導入も進んでいます。また、コメリやナフコといった大型ホームセンターでの店頭販売や、アマゾンでの販売も開始しています。
  • 三つ目は、Plantectの海外進出です。2019年末には韓国への進出を果たし、既に300セットの販売実績をあげています。今年4月には中国の高陵区(Gaoling)政府と農業のデジタル化プラットフォーム開発においてMoUを交しました。また、オーストラリアの企業において5月にモニタリングテストを開始しています。なお、Bosch.IOでは、日本発のPlantect以外にも、農業のデジタルトランスフォーメーションを促進するソリューションを有しています。例として、スペイン発のスマート灌漑センサーやドイツ発の露地栽培/防霜モニタリングが挙げられます。現在、農業の包括的なデジタルトランスフォーメーションの推進に向け、国内外の事業パートナーや投資企業を募っています。

おわりに
本日は、ボッシュが日本で展開する様々な活動の一部をご紹介させて頂きました。2020年初頭、ボッシュでは自動車業界は生産台数が8,900万台まで落ち込み、その傾向は2025年まで継続するという厳しい状況を予想していました。その後、新型コロナウイルス感染症が世界中に拡大し、我々は誰もが予想だにしなかった急激な経済の落ち込みや自動車業界の更なる減速という厳しい状況下に置かれています。しかし、私たちはどのような状況においても日本のお客様に注力し、そして日本の長期的な可能性を信じています。また、我々はイニシアチブと強い意志を持ち、より良い環境のために様々なイノベーションを生み出して来ました。私たちは今後も、「Invented for Life」をスローガンに掲げ、日本のみなさまのより良い社会と生活に役立つソリューションを提供してまいります。

最後に、みなさまの安全と健康を心より祈願しています。

ご清聴ありがとうございました。