ボッシュ株式会社
代表取締役社長、クラウス・メーダー
取締役副社長、クリスチャン・メッカー
クロスドメイン コンピューティング ソリューション事業部の事業部長エドウィン・リーベマン
によるスピーチ
2021年6月17日


本稿は実際の内容と異なる場合があります。


代表取締役社長クラウス・メーダーからのご挨拶
  • みなさま、こんにちは。本日は弊社の年次記者会見にご参加いただきありがとうございます。コロナウイルスによって、今年もまだ距離をとる必要がありますが、当社の業績と2021年の見通しをみなさまにお伝えする機会を迎えることができ、大変嬉しく思います。
  • 2020年は、コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により、想像だにしない1年となりました。生活、仕事、移動など、様々な場面で変化がありました。様々な制限のなかで、プライベートでも仕事でも、従来と同じようなスタイルを継続することに困難が伴ったかと思います。
  • パンデミック当初から、ボッシュでは従業員の健康と安全を第一優先としてきました。 ボッシュでは、可能な限りの在宅勤務を推奨しています。それは、事業の継続と従業員の健康を最大限守るという点で、在宅勤務の拡大が最善の策であると考えているからです。渋谷本社を例に挙げると、出勤率が最大で10%にまで低減しました。オフィスでの業務が必要な従業員に対しても、フレックス勤務のコアタイムを従来の4時間から2時間に短縮しました。これにより、ラッシュアワーを避けての通勤が可能となっています。すべての工場、研究所そしてオフィスを安全な場所とするために、迅速かつ継続的に、多岐にわたる対策を取り入れてきました。
  • ワクチン接種のスピードが迅速化し、日本におけるコロナウイルス対策として役立つことを期待しています。私たちは社会の一員として、日本でのワクチン接種に出来る限り貢献したいと考えています。当社ロケーションのひとつである埼玉県東松山市では、既に2つのことを開始しています。まず、ボッシュ健康保険組合の診療所は、東松山市民を対象としたワクチン接種の医療機関として登録されています。また、同診療所の看護師が、同市の集団接種会場でのワクチン接種に協力しています。更なる取り組みとして、当社は6月21日以降、従業員を対象とした職域接種が出来るよう計画しており、その方法について調査を進めています。
  • 事業の継続を図るためにも、可能な限りの感染防止対策を講じ、不測の事態に備えて参ります。
  • それでは、取締役副社長を務めるクリスチャン・メッカーより、2020年の日本の業績に関してご紹介します。

取締役副社長クリスチャン・メッカーのご紹介
  • みなさまこんにちは。私からも、本日みなさまにご参加頂いたことに対して、感謝の意をお伝えしたいと思います。私は、2020年11月にボッシュ株式会社の取締役副社長に就任した、クリスチャン・メッカーです。日本および東南アジア地域における自動車事業セクターのセールス部門における責務を担っています。
  • 1992年にボッシュ・フランスにてキャリアをスタートし、2007年から2010年までは日本で業務に従事しました。今回が2度目の来日となります。
  • ボッシュが日本の自動車メーカーからのご要望に最大限にお応えし、日本および世界における当社ビジネスを拡大できるよう、努めてまいります。

ボッシュ・グループ グローバルにおける2020年の業績
  • 2020年の日本の業績をご紹介する前に、ボッシュ・グループのグローバルでの業績を簡単にご紹介します。
  • 2020年、ボッシュ・グループはコロナウイルスならびに自動車生産数の減少の影響を受けながらも、黒字を達成しました。当初の予測を上回る好業績となりました。売上高は昨年比-6.4%の715億ユーロで、EBIT(支払金利前税引前利益)は約20億ユーロでした。
  • 2020年12月31日現在、ボッシュ・グループの従業員数は世界で395,000名です。これは、危機的な状況にも関わらず、安定した雇用を維持できていることを意味しています。

日本のボッシュ・グループの2020年の業績
  • 2020年、世界ならびに日本経済は、コロナウイルスのパンデミックにより、危機的状況でした。今もなお、自動車業界全体はパンデミックならびに世界的な半導体不足という困難に同時に対応しなければいけないという厳しい状況にあります。
  • ボッシュもまた、設立以来の大きな変革の中にいます。厳しさを増す市場環境のなかで、競争に打ち勝たなければなりません。
  • 2020年の日本における第三者連結売上高は2,690億円で、昨年比16%1減となりました。EBITは、日本の自動車生産数が17%減少したなかにおいても、幅広いポートフォリオにより、黒字を達成しました。
  • 2020年の当社のビジネスは、主にパンデミックの影響で春に大きく落ち込み、5月に底を打ちました。しかしながら、年の後半に規制が緩和されると景気が持ち直し、ボッシュも売上高の減少を埋め合わせることが出来ました。結果として、厳しい状況下においても、年初の予測よりも大きく上回る業績を上げることが出来ました。
  • 2021年も、複数のリスクに直面しています。コロナウイルス、そしてワクチン普及の遅れは、私たちが日常生活で直面するリスクであることは間違いありません。自動車生産においては、世界的な半導体不足というリスクにも対峙しています。当社では、2021年の自動車生産台数は、2019年の9,200万台を大幅に下回ると予測しています。
  • このような状況下においても、日本のボッシュ・グループの2021年の売上高は2桁増となることを見込んでいます。2021年第一四半期は、好調なスタートを切ることが出来ました。

日本の自動車メーカーとの安定した関係
  • 半導体不足が課題となっていますが、当社では世界の自動車産業は回復すると期待しています。また、日本の自動車メーカーが、2021年も世界自動車市場の30%のシェアを示すとともに、今後10年も同水準を維持すると予測しています。今後も、日本の自動車メーカーのグローバル展開をさらにサポートし、重要な役割を果たしていきたいと考えています。
  • 今年は、当社が日本でビジネスを開始してから110周年にあたります。日本の自動車メーカーを国内で長年サポートすることが出来、大変嬉しく思います。お客様のそばにいることで、より良いサポート提供やニーズに対する対応が出来ると考えています。100年以上にわたり日本でビジネスを展開しているということは、当社の技術に対してご信頼頂き、日本の自動車メーカーとの長きにわたる関係が構築出来ていることの表れです。今後も、日本の自動車メーカーの変革、そして国内外における魅力的なクルマづくりを支援していきます。
  • それでは、クラウス・メーダーより、 サステイナブルな社会、そして今後の成長に向けての取り組みについてお話させて頂きます。

ボッシュ、2020年にカーボンニュートラルを達成
  • まず、カーボンニュートラルに関してお話しさせて頂きます。コロナウイルスがもたらす不安や課題にも関わらず、当社は長期的な戦略を維持し、企業としての責任を放棄することはありませんでした。
  • 2019年に宣言した通り、2020年春には日本を含め世界400以上の拠点において、Scope1および2 のカーボンニュートラルを達成しました。このことは、既に独立した監査機関によって認証を受けています。当初の計画よりも、少ないオフセット量で早期に、そしてコスト効率よく実現を果たしています。ボッシュは現在、自らの拠点においてはCO2を排出しない、世界初の事業会社となっています。
  • しかしながら、当社の活動はこれで終わりではありません。2030年までに、当社ロケーションにおけるエネルギー効率の改善と再生可能エネルギーの拡大を図り、カーボンニュートラルの更なる質の向上に努めます。
  • また、調達から販売する商品(いわゆるScope3)の排出に関しての取り組みも進めています。2030年までに、サプライヤーから顧客に至るまでのサプライチェーン全体で、2018年比で15%にあたる6,700万トンの排出量削減を目指します。
  • これはとても困難な課題ですが、当社はこの目標を達成することに注力します。気候変動対策への取り組みには財政的な努力が必要となりますが、何もしなければ更なるコストがかかるということを理解しているからにほかなりません。
  • 水素から熱や電気を取り出す新たな取り組みも、エネルギー供給の一部です。ボッシュのドイツ・ヴェルナウのロケーションでは、固定酸化物形燃料電池システム(SOFC)を導入し、昨年6月から稼働しています。ボッシュでは、SOFCシステムの市場規模が2030年には200億ユーロに達すると見込んでいます。 日本においてもSOFC専門チームを立ち上げ、日本でのビジネスを開拓する可能性を模索しています。9月上旬まで、渋谷本社1階のショールームにて、SOFCのデモ機を展示しています。渋谷オフィスにお越しの際には、是非お立ち寄りください。

ボッシュ、PACEでモビリティの未来を形成
  • 次に、当社最大の事業セクターであるモビリティ ソリューションズ部門が、将来の成長に向けた戦略をどのように設定しているかについてお話ししたいと思います。
  • ボッシュは1886年以来、130年以上にわたって数々の革新的な技術を導入し、長年にわたり自動車用ハードウェアの世界的なリーディングプロバイダーとしての地位を確立してきました。 しかしながら、自動車業界はPACE(パーソナライズ化、自動化、ネットワーク化、電動化)を軸とした過渡期を迎えています。これらの過渡期においては、車載ソフトウェアの重要性が年々高まっています。当社は40年近くにわたって、社内で車載ソフトウェアの開発に取り組んできました。しかし、各部門が個別に取り組む従来型のソフトウェアエンジニアリングは限界に近付きつつあります。
  • 今年1月、当社はクロスドメイン コンピューティング ソリューション事業部を新設しました。これは、重要性の高まる車載ソフトウェアとエレクトロニクスに対応するものです。同部門は、ボッシュがソフトウェアのリーディングカンパニーを目指すうえでの布石となります。
  • それでは、日本で同部門を率いるエドウィン・リーベマンをご紹介します。

新事業部が率いるソフトウェアファーストの開発
  • みなさまこんにちは、エドウィン・リーベマンです。クロスドメイン コンピューティング ソリューション事業部の事業部長を務めています。
  • クロスドメイン コンピューティング ソリューション事業部は、世界で17,000人の従業員を擁し、その半数がソフトウェアエンジニアで構成されています。 新事業部には、運転支援、自動運転、カーマルチメディア、パワートレイン、ボディエレクトロニクスの各分野のソフトウェアエンジニア、電気・電子系エンジニアを配属しています。
  • 自動車市場において、PACEは自動車メーカーにとって純粋な走行性能ではなく、差別化を図るための重要な要素となります。これにより、より高度なエレクトロニクスとソフトウェアへの移行が加速されます。これは、ソフトウェア集約型の自動車用電子システムが、業界の中核をなすものになりつつあることを意味しています。
  • ソフトウェアは、自動車をインテリジェントかつアップデートするうえで重要な役割を担い、ドライバーに目に見える利益をもたらします。当社では、ソフトウェア集約型電子システム分野の市場規模は200億ユーロにのぼると見ています。また、2030年まで年間15%成長すると見込んでいます。
  • この傾向は同時に、業界に課題をもたらし、特に自動車エンジニアリングの複雑さをかなり増大させています。車両コンピュータ、制御ユニットおよびセンサーの円滑な相互作用は、今後必須となります。これは、多くの個別ECUを持つ現在のE/Eアーキテクチャにとって課題となるでしょう。したがって、集中型アーキテクチャと、完全互換性のある電気・電子部品も、非常に重要な要素となります。
  • ボッシュでは、新しいE/Eアーキテクチャとビークルコンピューターを用いて、この変革の道筋を立てています。現在、将来の車両システムの複雑性を軽減する新しいE/Eアーキテクチャの開発を行っています。この開発の中心にあるのは、今日のドメイン特有のE/Eアーキテクチャから、非常に多くの個々のコントロールユニットの代わりに、ごくわずかの非常に強力なビークルコンピューターのみを使用する、領域横断的な集中型E/Eアーキテクチャへの移行です。
  • したがって、ビークルコンピューターは、ボッシュがソフトウェア集約型電子システムにおいて主導的な役割を拡大しようとする取り組みの中心となっています。クロスドメインビークルコンピュータは、機能配分の柔軟性を高めるとともに、統合および制御を簡素化します。このため、ソフトウェアの主要な機能はすべてわずか数台のコンピュータに集約され、ますます増加する機能をより簡単に管理することが可能となります。
  • 車載ソフトウェアの機能性を実現するだけでなく、ネットワークサービスが拡大する中で、ソフトウェアとクラウドがどのように相互に作用し、データをやりとりするかを検討しなければなりません。IT技術と自動車の要件との組み合わせは、これまでにない複雑なソフトウェアをもたらします。
  • そこで、当社はMicrosoftと提携し、自動車とクラウドをシームレスに接続するソフトウェアプラットフォームの開発に取り組みます。このことは、エンド・ツー・エンドの車両ソフトウェア・エコシステムの複雑性の管理に貢献するでしょう。今回の協業により、ミドルウェアからクラウドベースのソフトウェアサービスに至るまで、深層組み込みの車載ソフトウェアからソリューションを提供することが可能となります。
  • クロスドメイン コンピューティング ソリューション事業部により、当社は単一部門から車載エレクトロニクスとソフトウェアをお客様に提供できるようになります。日本では、国内外における強力な事業展開によってドイツと同様に、運転支援および自動運転、コネクテッドインフォメーションソリューション、アドバンストネットワークソリューション、E/Eアーキテクチャの4つの分野すべてをカバーしています。当社は日本の自動車メーカーに、トータルソリューションを提供することが可能です。
  • 次に、電動化における戦略をクリスチャン・メッカーからご紹介します。

電動パワートレインで実現するサステイナブルなモビリティ
  • それでは、電動化によるサステイナブルなモビリティ戦略についてお話しさせて頂きます。
  • 近年、自動車メーカーは急速に電動化に向けて動いています。当社では、電動化への準備を以前から進めて来ました。2021年は、昨年の5億ユーロを超える7億ユーロをeモビリティに投資する予定です。これまでのeモビリティへの累計投資額は、50億ユーロにのぼります。eモビリティは、当社の中核事業のひとつとなりつつあります。
  • しかし電動化とは、バッテリーだけの電気自動車に頼ることではありません。燃料電池ソリューションの量産に向けた準備も進めています。燃料電池システムに必要な各種コンポーネントを開発し、コンポーネントから統合システムに至るまで、製品を市場に提供する準備を整えています。
  • モビリティのニーズは国によって、また個人によっても異なります。だからこそ当社は、技術に対してオープンで幅広いアプローチをとり、サステイナブルかつそれぞれの好みに応じた手頃なモビリティを実現するために、様々なパワートレイン・コンセプトに注力しています。
  • そこで、私たちは2つのアプローチをとっています。一方で、ハイブリッド、電気自動車(EV)、燃料電池車向けのパワートレイン部品の開発を進めています。加えてもう一方では、内燃機関の高効率化を進めるとともに、合成燃料、いわゆるeFuelを活用できるよう研究しています。ディーゼルエンジンやガソリンエンジンも、eFuelを使うことでCO2ニュートラルになる可能性があります。eFuelの使用により、世界で13億台以上の自動車がカーボンニュートラルになると見込んでいます。すべての車両を再生可能エネルギーで動かすことができてはじめて、意欲的な気候保護目標を達成することができるのです。

電動化に関連するネットワーク化/パーソナライズ化モビリティ
  • ここまで、電動化における戦略についてお話ししてきました。世界市場、とりわけ中国、米国、欧州において電動化が急速に拡大しています。eモビリティの更なる拡大を確保するためには、包括的で使いやすい充電インフラが不可欠です。ボッシュは、包括的で柔軟な電動化システムまたはコンポーネントのポートフォリオを提供しているだけではありません。充電インフラをサポートするためのインテリジェントなソリューションを、エンドユーザー、企業、充電ステーションの運営者に提供しています。
  • ボッシュが提供する充電サービスにより、電気自動車のドライバーは、公共の利用可能な充電ステーションを簡単に検索し、探すことが出来ます。現在、欧州全域で20万以上の充電ステーションが、拡大を続けるボッシュの充電ネットワークの一部となっています。
  • 充電スポットをネットワーク化することで、ドライバーの利便性向上と個々の要望への対応が可能となります。コンビニエンスチャージングは、代表するソリューションのひとつです。コンビニエンスチャージングにより、電気自動車のドライバーは、常にバッテリーの有効範囲と計画された経路上における充電スポットを把握することが出来ます。経路、充電スポット、充電中のサービスについてのおススメを受信することが出来るのです。これらのおススメはすべて、ドライバーの個々の好みにあわせたものとなります。 日本においても、当社と一緒にサービスを実現するための潜在的なパートナーを探しており、複数のプレーヤーからの関心を集めています。
  • 次に、クラウス・メーダーより自動化についてご紹介させて頂きます。

iBooster、日本での製造開始
  • ここで、日本における競争力を向上する大きなマイルストーンを発表したいと思います。
  • より燃料効率の良いパワートレイン、そしてより安全な運転支援機能の達成に向けた需要拡大に対応するためには、車両はモジュール式でスケーラブルな無負圧にも対応したブレーキシステムを搭載する必要があります。
  • これらの需要に対応する上で重要な役割を果たすのが、iBoosterです。iBoosterは、負圧を必要とせず、ペダルフィーリングのカスタマイズ、衝突被害軽減ブレーキの性能向上、そして自動運転下における冗長性など、高性能なブレーキ性能を実現する新しい電動ブレーキブースターです。iBooster は、通常のESCの最大3 倍にあたる高い昇圧性能を誇ります。高速での圧力上昇により、緊急自動ブレーキ作動時の制御距離の短縮が可能になり、今後求められるNCAPの要求にも対応できます。
  • ボッシュは、2013年に他社に先駆けて電動ブレーキブースターの第1世代を市場投入しました。 これまでのiBoosterの累計出荷台数は、1,000万台以上にのぼります。
  • 当社では、電動ブレーキブースター市場は、2020年から2027年にかけて年率20%以上で拡大すると見込んでいます。 この市場拡大は、自動化と電動化を推進する複数の市場要因によってもたらされます。自動化の側面では、アクチュエーターの冗長性、NCAPを含む消費者テストや法規制の厳格化が、電動ブレーキブースターの市場拡大を牽引しています。電動化の側面では、ハイブリッド車や電気自動車は、低負圧・無負圧にも対応できる電動ブレーキブースターを必要としています。内燃機関車でも、負圧を低減する傾向にあります。これにより、電動ブレーキブースターは多くの自動車メーカーに適した選択肢となっています。
  • もちろん、iBoosterなしでAEBや低負圧パワートレインに対するより厳しい要求に対応することも可能です。しかし、iBoosterなしでより高いブレーキ性能を実現するには、ハイエンドのESCが必要です。また、ハイブリッド車および電気自動車においては、真空を得るための付加的な構成要素として電気バキュームポンプが必要となります。結果として、このようなシステムでは搭載工数が増加するだけでなく,自動ブレーキ機能の冗長化が達成できません。このような背景から、iBoosterはすでに市場に受け入れられており、今日の需要に適合した多くの車両に搭載されています。
  • 当社では、iBoosterの主な利点は、自動化および電動化に対する先進的な取り組みを進める日本の自動車メーカーとの親和性が高いと見ています。そこで、2022年後半から日本でiBoosterの製造を開始することを決定しました。これにより、ものづくり文化の浸透している日本の自動車メーカーからのご要望に、より即した対応が可能になると考えています。今回の決定は、日本の自動車メーカーのみならず、日本市場に対する当社の強いコミットメントを示すものです。
  • また、日本においてiBoosterの製造を開始するだけでなく、日本の自動車メーカーの小型車に対する要望に対応するため、iBoosterの小型車向け派生製品「iBooster Compact」の開発を進めています。量産開始は2022年の予定で、現在、複数の自動車メーカーと導入の検討を進めています。なお、iBooster Compactも日本での製造を予定しています。
  • ボッシュでは、iBoosterの搭載車両の増加に伴い、より多くの車両が緊急時に迅速に停止できるようになることから、より安全な道路環境につながると期待しています。
  • iBoosterはボッシュにとって次世代の主力製品になるとみており、国内におけるiBooster製造開始に対して、30億円の製造設備投資を予定しています。

リーディングテクノロジーカンパニーとしてのボッシュ
  • 最後に、モビリティソリューション事業以外の領域において、ボッシュがスローガンである"Invented for life"をどのように実現しているのかについてご説明します。
  • コロナウイルスへの対抗策として、ボッシュは世界的大流行が始まった当初に自社のVivalytic分析装置向けに迅速PCRテストを開発しました。当初は結果判明までに2時間半を要していましたが、現在は30分以内で陽性判定を検知するまでに迅速化しています。これは、ボッシュがより良い生活と社会づくりに貢献するために技術力を向上し続けているということを意味しています。
  • 新技術のひとつとしてあげられるのが、ボッシュのビルディングテクノロジー部門が開発した「Crowd Detection(クラウド・ディテクション)」です。同社は、ビルトインビデオアナリティクスで10年以上の実績を有しています。
  • コロナウイルスのパンデミックにより、人や企業の機能は世界中で変化しています。現在企業は、従業員と顧客の両方にとって安全な環境を維持しながら、どのようにして店舗や施設を稼働させ、業務を継続するかということを中心に、新たな課題に直面しています。セキュリティ、安全、通信技術は、伝統的な方法と非伝統的な方法の両方で役立つ可能性があります。
  • このような状況下において、ボッシュのビルディングテクノロジー部門は、「Crowd Detection(クラウド・ディテクション)」を開発しました。カメラベースのボッシュ ビデオ アナリティクス アルゴリズムを使用して、特定エリアの密レベルを検知し、アラートを出すソリューションです。位置情報を取得するインテリジェント監視カメラを用いることから、ビデオ分析ソフトウェアは必要ありません。例えば、ショッピングモールや空港など、特定のエリアにおける密状態を測定し、所有者が利用者に対して警告メッセージを伝えることができるようになります。
  • 更に、店舗など特定のエリア内における実際の人数を把握するために活用できるソリューションとして、「People Counting(ピープル・カウント)」も開発しています。2020年11月、ボッシュセキュリティシステムズ株式会社はPhilips社と共同で、ボッシュのピープル・カウントと、Philipsのデジタルサイネージ用ディスプレイを組み合わせた「People Counting Visualization System(ピープル カウント ソリューション)」を日本市場に投入しました。これにより、密であることの周知を図り管理することが、より効率的かつ効果的に実践できるようになります。
  • ピープル カウント ソリューションは、ボッシュのインテリジェント監視カメラを用いて特定のエリアに出入りする人数をカウントし、事前に設定した一定の人数を超えた場合、Philips社のデジタルサイネージ上で警告表示を出す仕組みとなっています。特定エリアや店舗のオーナーは、スクリーン上の警告表示を自由に変えることが可能です。
  • ビデオアナリティクス内蔵のボッシュのカメラは、人数のデータを直接Philips社のディスプレイに送信します。そして、お客様や関係者向けにディスプレイに情報を表示することで、密状態を管理し、ソーシャルディスタンスの確保を支援します。

ボッシュ、AI主導型企業へ
  • 当社における戦略の主軸の一つとなるのが、AIとIoTを組み合わせたAI・IoTです。当社では、AI・IoTは数十億ユーロ規模の市場で成長機会を創出すると考えています。
  • ボッシュでは、リーディングAI・IoT企業になるべく前進しています。ボッシュはすでにネットワーク対応の電動工具、家電製品、ヒーティングシステムを約1,000万台販売しており、アクティブユーザーの数は増加傾向にあります。トータルで、ボッシュのエレクトロニクス製品の90%以上がネットワーク化機能を装備しています。加えてボッシュは2025年までに全製品にAIを搭載する、または開発や製造にAIを活用することを目指しています。ボッシュのAIセンター(BCAI:Bosch Center for Artificial Intelligence) は、既に成果を上げています。設立からわずか3年で約3億ユーロもの業績に貢献し、初期投資を回収しています。
  • AI・IoTの事例として挙げられるのが、フィットネストラッキングです。フィットネストラッカーなどのウェアラブル・ヒアラブル市場の急成長により、エンドユーザーからの要件はますます厳しさを増しています。 使いやすさに加えて、エンドユーザーにとって最も不可欠な要素のひとつは、長いバッテリー寿命にあります。正確な歩数検出、アクティビティ認識、フィットネストラッキング、カロリー計算などの常時オンのアプリケーションの必要性は、言うまでもありません。
  • ボッシュ・センサーテックはこの需要に応えるため、ウェアラブル向けに世界初の自己学習型AIセンサーを開発しました。このセンサーは、フィットネストラッキング、ナビゲーション、機械学習分析および方向推定のような常時オンのセンサーアプリケーションに向けた、理想的なオールインワンソリューションを提供します。この自己学習型AIセンサーの最大の特徴は、個人単位でカスタマイズできることにあります。つまり、エンドユーザーが製品を購入した後、個々の体質や目的に合わせてパーソナライズ化することができるのです。
  • ここで、事例をビデオでお見せしましょう。自己学習型AIソフトは、事前に登録済みの15以上のエクササイズを標準セットとして活用することが出来るため、使用にあたり特別なトレーニングは必要としません。デバイスが、ユーザーのアクションを自動的にカウントします。また、ユーザーは元々設定されていない新たなフィットネスアクティビティをデバイスに追加し、個々のニーズに合わせてカスタマイズすることが可能です。ユーザーがデバイスに新しいアクティビティを登録すると、デバイスが自動的にフィットネス活動を追跡します。
  • さらにコーチのように、指導をサポートするセンサーとして活用することも可能です。例えば、リハビリテーションにおける使用です。患者が病院のインストラクターとトレーニングのパターンを記録すると、自宅でリハビリのトレーニングをする際に、デバイス内のセンサーがコーチのような役割を果たすことが出来ます。患者が正しい動作をすると、センサーが自動的にリハビリの回数をカウントします。
  • さらに、AI はセンサー自体で動作するため、クラウドとの接続は必要ありません。これにより、インターネットへの接続を必要とせずに、データを非公開にし、アクティビティを継続的に追跡・分析することができます。
  • 世界のウェアラブル市場は、健康志向の高まりにより増加傾向にあると予測されています。このセンサーについては、既にメーカーと協議を進めており、日本の大手メーカーからも関心が寄せられています。
  • ボッシュ・センサーテックはまた、個々の認識アルゴリズムをカスタマイズできる機能を備えた、他のAIセンサーの開発も進めています。それが、新しいガス・センサーBME688です。メーカーは、AI Studioソフトウェアを使用することで、家電、IoT 製品、スマートホームなど、特定の用途でガス・センサーをトレーニングすることができます。ガス・センサーは、食品腐敗の検知や、ガスの存在を検知して森林の火災をタイムリーに検出し、気温や湿度の変化を追跡するなど、カスタマイズした最新のアプリケーションに最適です。
  • 例えば、メーカーが食品の腐敗を検出できるセンサーベースの製品を開発したいと考えるならば、食品中のバクテリアが放つ揮発性の高い硫黄化合物による検知が可能です。同様に、口臭や体臭も、センサーによって検出することが可能となります。また、歯周病の検知や、赤ちゃんのおむつの交換タイミング、介護施設での排せつ物の検知など、健康状態をチェックするセンサーとしての活用も期待されています。
  • AIは製造業においても特に有益です。ボッシュでは、製造工程における異常や不具合を早期に検出するAIベースのシステムを開発しました。このAIソリューションは2021年中に、世界中の約50のパワートレイン工場の800以上の生産ラインにつなげる予定です。
  • 6月7日、当社はドイツ・ドレスデンに300mmウエハを扱う半導体工場をオープンしました。135年の歴史のなかで最大の投資であることに加え、当社初の完全なAI・IoT工場という特徴も有しています。
  • 当社では、AIソリューションは工場の効率化、生産性の向上、環境への配慮、製品の改善につながるものと確信しています。
  • このように、当社は技術ソリューションで人と環境に貢献するAI・IoTに期待しています。私たちは、事業を展開するすべての分野において、AI・IoTのリーディングカンパニーになることを目指しています。

ボッシュ、戦略的目的である“Invented for life”を追求
  • 本日は、サステイナブルな社会やモビリティ、IoT、AIなど、当社が将来重要な分野にどのように注力しているかについてお話ししました。
  • 現在の状況から、日本においても厳しい1年となることが予想されますが、長期的な可能性を有する日本の自動車市場に引き続き貢献していきます。今後も、当社のスローガンであるInvented for lifeを掲げてポートフォリオの更なる拡大を図り、人々や生活に役立つ革新的な技術を提供して参ります。
  • ご清聴ありがとうございました。

1 包装機械事業売却の影響を調整した前年比