タニア・リュッカート:日本はボッシュにとって重要な市場
みなさま、おはようございます。本日は、ボッシュの新本社そして都筑区民文化センターの竣工を祝う、記念すべき日です。新本社の完成を大変嬉しく思うとともに、この記念すべき日に立ち会えることができて大変光栄です。

わたしは昨日、初めてこの新本社に足を踏み入れましたが、そこで気づいた、いくつか誇りに思っている点をみなさんに紹介したいと思います。

ひとつめは、サステナビリティの観点です。ボッシュにとって、環境保全や気候変動に関する取り組みは最優先事項です。そのため、新社屋には太陽光パネルや、窓のルーバー、自動換気システム、雨水の利用など、省エネや自然資源の活用を可能にするさまざまなテクノロジーを導入しました。記者会見後のオフィスツアーでは、新本社におけるこれらのエネルギー効率化対策の一部をみなさまにご紹介する予定です。

ふたつめは、デジタルの観点です。ボッシュの新本社そして都筑区民文化センターの建設では、日本のボッシュでは初となるデジタルツインを用いました。企画から設計、建設において、インフラやケーブルダクトなど、建築物に関わる現実世界のさまざまなデータをコンピュータ上で再現することで、建設プロセスの最適化や修繕作業のシミュレーションが可能となりました。コロナ禍ではリモートで働くスタッフも多くいたため、デジタルツインの導入は建設プロジェクトを進める上で非常に役立ちました。

ご覧の通り、日本のようなテクノロジー先進国にふさわしい、エネルギー効率に優れた最新鋭のボッシュの新本社が、ここ横浜に誕生したことを大変誇りに思います。しかし重要なのは、新本社の建設だけではありません。わたしたちは今回のプロジェクトで、地域社会に対するコミットメントも体現しています。

ボッシュは2018年、「横浜市都筑区における区民文化センター等整備予定地活用事業」における事業者として横浜市から選定されました。以来、正式に認定されたことを誇りに思い、この地においてに新本社および都筑区民文化センターの完成に向けて建設を進めてきました。興味深いことに、これはボッシュの拠点と地域の施設を一体として建設するという、グローバルにおいてもボッシュ・グループ初となる公民連携プロジェクトです。この場を借りて、ボッシュを信頼し、事業者として選定してくださった横浜市に感謝の意を表したいと思います。そして、このプロジェクトに協力してくださった皆様、またボッシュを受け入れてくださった都筑区の皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。

都筑区、そして横浜市とこのようなプロジェクトに携われたことを非常に光栄に思います。わたしたちは、地元の自治体と協力し続けながら、地域のコミュニティや人々のために賑わいを創出することを使命としています。これは、日本市場、そして本社を置く地域に傾注し続ける証であり、今後も日本における113年の歩みを継続していきます。日本に長年にわたり根差す企業として、ボッシュがこれからも日本の皆様に愛される企業になれることを期待しています。

日本は、ボッシュにとってとても重要な役割を担う市場です。ボッシュは1911年、まさに横浜の地で日本のビジネスをスタートしました。以来ボッシュは、日本での拠点を拡大し、モビリティ分野を中心に、電動工具から産業機器まで、幅広い分野で日本の産業の発展に貢献してまいりました。そして世界の自動車生産の30%を担う日本の自動車メーカーを、ボッシュは継続的にサポートしてきました。

日本は、イノベーションとテクノロジーで発展し続けています。そして近年、日本の自動車メーカーはソフトウェア・ディファインド・ビークルに力を入れるなど、常に進化を続けています。ボッシュはこれからも日本で、多様化するお客様のニーズに寄り添い、包括的ソリューションを提供することで、日本の産業の発展に寄与していきます。

それでは、日本におけるボッシュの今後の展開については、メーダー社長から詳しくお話してもらいましょう。メーダーさん、よろしくお願いします。

クラウス・メーダー:今後のボッシュの展開について
みなさま、本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。ついに、皆様にこの新本社をお披露目することができて、とても嬉しく思います。

さて、新本社の建設が先に完了したことで、わたしたちは今年の5月から本社を移転し、業務をしています。今回の本社移転をきっかけに、東京・横浜エリアに点在していた8拠点から、約2,000人の従業員が集まり、ともに働いています。引っ越してきて約3か月が過ぎましたが、オフィスエリアはもちろん、食堂や、オフィス階の中央に設置したコミュニケーションゾーンなど、あらゆる場所でのコミュニケーションが非常に活発になったと感じています。より多くのコミュニケーションやエンゲージメントの促進を狙ったオフィスデザインが功を奏したと言えます。

また現在、日本のボッシュでは約40ヶ国の従業員が働いています。そのため、この新本社ではダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを意識したオフィス設計を導入しました。例えば、全フロアにユニバーサルデザイントイレを設置。さらにオフィス内に従業員向けの搾乳室や、祈祷室としても利用できるマルチパーパスルームを設置しています。このように、従業員が働きやすい職場になるようなオフィス環境を目指しました。

加えて、急激に変化する自動車業界における市場の要求に対応するため、ボッシュは今年、グローバルにおけるモビリティ事業を再編しました。例えばふたつの事業部を統合したビークルモーション事業部は、現在はABSや横滑り防止装置ESCからステアリングに至るまで、ビークルダイナミクスを扱います。これまで別の事業部だった従業員が共に開発を進めることになったこのタイミングで、コラボレーションが活性化される新しい拠点に移ることができたことは、非常に意味のある事です。再編成した組織が、この新本社、そして同じ都筑区内にある既存の研究開発施設に集約されたことで、事業部をまたいだ協業が促進されることでしょう。そして今後、国内の研究開発体制のさらなる強化を見込んでいます。日本のボッシュはさらなる成長を続け、お客様により良いサービスを提供できるようになります。

そしてこのたび、同一敷地内に、都筑区民文化センターの建設が完了しました。横浜市の要求水準等に基づき、計画通り建設が完了したことを嬉しく思います。このたび竣工を迎えた都筑区民文化センターには、コンサートなどが開催できる約300席のホールや、リハーサル室、さらにギャラリーなどを設けています。都筑区民の皆様は、このような施設の完成を長年待ち望んでいたと伺っています。そして横浜市とのネーミングライツ契約のもと、都筑区民文化センターは「ボッシュ ホール」という愛称で、2025年3月に開館予定です。

このように本日無事に、ボッシュの新本社と都筑区民文化センターの竣工を記念したイベントを迎えられたことを、大変喜ばしく思います。私事ではございますが、わたしはこの9月末で、ボッシュ株式会社の代表取締役社長という役目を退任いたします。2017年にこのポジションに就任して以来、点在する拠点をまとめ、お客様のニーズにより迅速に対応できるようにしたいという想いで新拠点の建設を願っていました。ボッシュにとって、日本は重要な市場です。そして、私たちには彼らをサポートするという責務があります。その責務を果たすためには、事業部やグループ企業の垣根を越えた連携が重要です。退任を目前にして、ついにこの新本社完成とともに、今後さらに日本におけるボッシュがパワーアップして成長していくだろう、という期待で胸がいっぱいです。

10月1日からは、現取締役副社長のメッカーが私の後任として、ボッシュ株式会社の代表取締役社長に就任します。メッカーは、2020年より現職に従事しており、すでに日本の自動車市場に精通しています。また、自動車関連事業を再編し、今年1月からスタートしたボッシュ モビリティでは、アジア・東南アジア地域セクターボードのプレジデントとして、モビリティビジネスをけん引してきました。メッカーはこれからも、日本におけるボッシュ、そして日本のお客様を成功に導いていくことと確信しています。

さてここからはメッカーに引継ぎ、新本社における開発体制について説明してもらいます。

クリスチャン・メッカー:日本国内における開発能力の強化
わたしからは、日本における研究開発の新しい取り組みについてご説明します。

ボッシュは1990年に、ここから約2キロメートル離れた都筑区牛久保に、研究開発施設を建設しました。この中にも、この牛久保の拠点に取材やイベントで来られた方もいるかと思います。そして今回、同じ都筑区内に、研究開発施設を備えた新本社が完成しました。これらふたつの施設にボッシュ・グループ全体の4割以上にあたる従業員が集約されています。

昨今、モビリティ市場において自動車開発は急激に発展しています。そこで、新本社では、自動車の電動化や自動化、さらにソフトウェア・ディファインド・ビークルといったトレンドに対応するべく、研究開発設備を強化しています。新本社では、地下1階と2階に「ヘビーラボ」と呼ばれる大型の実験・研究設備を、そして2階から4階の業務フロアには中小規模の「ライトラボ」を設置しています。

新本社では一部のテスト設備を拡大、そして新規投入することで、常に変化する日本のお客様の多様なニーズに迅速に対応できるように体制を整えています。いくつか例をご紹介しましょう。

電動化の例としては、自動車における搭載製品の作動音、振動が車両全体にどのように伝達されるかをテストするための半無響室を地下に年内に新設予定です。近年、自動車走行時の遮音性が向上し、さらに電気自動車やハイブリッド車が普及してきたことで、エンジンノイズが低下し、運転時の快適性が高っています。しかし、静かな車室内での機械作動音を気にするユーザが増えています。特に日本人は静寂性を好む傾向にあることから、音、振動に対する試験の重要性が高まっています。

自動化に向けた対応としては、先進運転支援システム(ADAS)に必要なレーダーの測定を行う電波暗室を新設しました。従来、ボッシュは特殊設備を兼ね備えているドイツやハンガリーの拠点にテストを依頼していました。しかしその場合、サンプル受領後、お客様への結果の報告までに約1ヶ月かかっていました。ところが国内に新設備を備えたことで、テストに使用するパーツを輸送する時間やコストが省けます。かつサンプル受領から結果の報告まで最短約1週間と、試験期間の短縮や輸送コスト削減に貢献しています。

また近年、自動車のネットワーク化に伴い、車内でハンズフリーの通話をする機会も多くなったと思います。音声認識はハンズフリーでのインフォテインメント操作など、車の利便性を高めることにも貢献しています。そこでボッシュでは今回、車内での通話品質を車載インフォテインメントシステムから調整する「チューニングルーム」という施設を新設しました。このチューニングルームでは、お客様の開発車両を試験機器につなげ、スピーカーやマイクなどの出力を調整し、車内での音声認識の品質が、国際基準や各種自動車メーカーの基準に満たしているかどうかをテストします。この施設は、後ほどのファシリティツアーで実際に中をご覧いただけます。

さらに、従業員同士のコミュニケーションの活発化を目指し、業務フロアにライトラボを複数設置しています。ガラス張りのラボや、あえて仕切りを作らないオープンなラボを業務フロアに隣接しました。そうすることで、モノに直接触れながら開発を進められるようになっています。さらに、他部署や異なるチーム間の連携を促進するため、間仕切りのないオープンなオフィスにしています。例えば、研究開発エリアで働くエンジニアと、業務エリアで働くプロジェクトマネージャーの間で、プロジェクトの進捗確認がしやすくなっています。このように、異なる技術領域のエキスパート間のコミュニケーションが効率化することが期待され、領域をまたいだ開発がさらに推進されるでしょう。このように新本社ではこれまで複数拠点に点在していたエキスパートが連携し、チーム内や他の事業部と密にコミュニケーションを取りながら研究開発を進めています。これはアーキテクチャーの集約化やソフトウェア・ディファインド・ビークル時代の到来に伴い、さまざまな機能を開発する異なるチームが、ソフトウェア・システムをシームレスに共同開発できる体制を見据えた取り組みです。

自動車向けの開発設備にとどまらず、1階には電動工具事業部のワークショップルームを備えています。ここではボッシュが、電動工具を販売する代理店や販売店、電動工具を使用するプロユーザー向けに、ボッシュの電動工具製品の使い方などをレクチャーするワークショップを開催予定です。

自動車開発から消費者向け製品に至るまで幅広い分野において、ボッシュはこれからも、テクノロジーカンパニーとして日本のお客様をサポートしていきます。

さらにボッシュは、この本社1階においても、賑わいの醸成ならびに地域におけるボッシュのコミットメントを表す様々な施策を取り入れます。明日、2024年9月7日には、「café 1886 at Bosch」がオープンします。渋谷の旧本社にも運営していたカフェ同様、明日から一般のお客様も利用できるようになります。従来通り、プレッツェルやカリーブルストといったドイツを彷彿させるオリジナルメニューも取り揃えています。

さらにボッシュの製品の魅力や取り組みについて一般の皆様にさらに理解してもらうために、ショールームを設けています。現在は、ボッシュの歴史と最新技術への理解促進を目的に、各事業部が誇るソリューションの新旧製品を展示しています。ボッシュの歴史を物語る展示品のひとつとして、100年以上前に供給を開始した、マグネトー式高圧点火装置のレプリカが挙げられます。スパークプラグを使用し、確実に内燃エンジン内の混合気に着火する初の技術となるもので、自動車産業の大きな発展に寄与したと言われています。また、最新のパワートレインソリューションとしてeDMや水素関連製品を展示していますので、開発の変遷をぜひこのあとご覧になってください。

またボッシュの製品だけではなく、新本社の近くに位置する横浜市歴史博物館と連携し、都筑区にゆかりのある所蔵品を常時展示する予定です。現在は、都筑区のまさにこの新本社が建設されたこの土地で発掘された、2,000年以上前の弥生時代の土器を展示しております。この後の施設ツアーに参加される方は、ぜひご覧になってください。

また今後週末には、こちらの同時通訳ブースや大型モニターを常設している大会議室や、中・小会議室の一部を有料で一般に貸出す予定です。これは、地域における文化交流や地域の活性化を促進するためです。ボッシュ ホールから、ボッシュの新本社1階、その間に位置する全天候型広場にかけて、この一帯のエリアは、近隣住民はもちろん、一般の方もシームレスに利用できるオープンな施設です。ボッシュでは今後、ボッシュ ホールの指定管理者と密接に連携しながら、この施設一帯でさまざまなイベントやプログラムを企画、実施してまいります。

ボッシュは今後も都筑区とともに、地域における相乗的な賑わい創出にむけて連携を強化していきます。

それでは、ボッシュの新本社の施設については、Q&A終了後11時から始まるオフィスツアーをお楽しみください。

ご清聴ありがとうございました。