ボッシュ電動工具の環境への取り組み: 前と同じグリーンに見えても実は…
持続可能なパッケージングに再生プラスチックを活用: 色合いのほかにも多くの課題が
ハンガリーのミシュコルツ拠点で働くエンジニアのTamás Sándorはレモネードを最後まで飲み干し、空になったペットボトルを目の前のテーブルの上に置くと、笑いながらこう言いました。「ちょうど工具ケースのパッケージング化に取り組んでいたところでした」。それがおかしいように思えても、確かにその言葉に誤りはありません。Sándorは4人チームのメンバーの1人として、使用済みの飲料用ペットボトルを持続可能なパッケージングに活用するプロジェクトに取り組んでいるからです。
このプロジェクトが2018年からスタートして以来、再生プラスチックはボッシュ電動工具のホーム&ガーデンツールの100万個以上の工具ケースの製造に用いられています。同プロジェクトで、チームはボッシュ・グループ内を対象としたEHS&サステナビリティアワードの「持続可能な製品」部門で賞を獲得しました。この工具ケースの色は文字通り「グリーン」です。DIYを愛する方々には、リサイクルされた、環境にやさしい材料がボッシュ電動工具のグリーンシリーズ(DIY用シリーズ)のパッケージングに用いられていることにお気づきいただけているようです。
「グリーン」カラーはボッシュのための「スペシャルブレンド」
長い間悩みの種となったのは、まさにこの「グリーン」でした。プロジェクト統括責任者のEszter Vályi-Tapaはこう説明します。「ボッシュで使用されるグリーンは非常に特殊な色合いですが、欧州の廃棄物から抽出した材料の色は実にバラエティに富んでいるのです」。そこで、新しいパッケージングでも以前のケースと同じ色合いのグリーンを作り出すことが大きな課題となりました。パッケージングのエキスパートであるSándorはこう話します。「この色がボッシュの顔とも言えるので、これは非常に重要な要素でした。しかし、私たちの元に送られてきた初期の材料の色は、グリーンではなく、グレーでした」
品質管理エンジニアのSándorは、適切な色合いにするためにサプライヤーと幾度となくテストを重ね、リサイクル会社や染料メーカーなど、プロジェクトに関わる関連会社にいくつもサンプルを送りました。Sándorはこう説明します。「今はリサイクル会社がベースとなる材料を選定しているため、常に同じグリーンを実現できるようになりました。これは、まさにボッシュのためのスペシャルブレンドです」。一方、染料メーカーは、Sándor率いるチームが作成した色見本をもとに作業を進めました。
高い品質基準
コスト削減の観点からも、ボッシュは持続可能なパッケージングにシフトしようとしている、とEszter Vályi-Tapaは説明し、こう述べました。「適切な材料を見つけるためにいろんなことを試みたものの、私たちの目的に叶うものはなかなか見つかりませんでした」。しかし、いろいろと模索しているうちに材料も進化してきた、と彼女は話します。工具ケースは、さまざまな試練に耐えられなくてはなりません。新しいパッケージングは基本的に、高いところから落としたり、持ち運びを想定してさまざまな気候・気象条件にさらすなど、各種の耐久テストにかけられるのですが、このプロジェクトでもこうしたハードなテストを実施しました。たとえば、チームは完璧な色合いのグリーンをまとった持続可能なパッケージングをすでに開発していたものの、リサイクルされた材料が原材料並みの耐久性を備えておらず、落下試験をクリアできなかったことがありました。この場合は、また振り出しに戻ることになります。
「重要なマイルストーンは、サプライヤーと一緒に品質に関する要件、そしてリサイクルした原材料を用いた生産の限界を設定することでした」と説明するのは、サプライヤーとの窓口を担当した品質管理エンジニアのKrisztián Nagyです。チームは文字通り、他の点においても適切な材料を見つけなくてはなりませんでした。「自宅のゴミ箱でもよく経験することだと思いますが、材料自体の臭いがかなり強かったのです」と、サプライヤーのアドバイザー役を担ったMelinda Farkasは説明します。そこで、この問題を解消するために、サプライヤーの製造プロセスを変更してもらうことにしました。
Win-Win Situation(二重のメリット)
プロジェクトは2018年1月にスタートしました。同年12月には、持続可能な包装を採用した最初のケースの生産が開始されました。このようにして、2年間で1,146トンのプラスチックがリサイクル材料に置き換えられました。「私たちはプラスチックに新たな生命を吹き込んでいます」と、プロジェクト統括責任者であり、コストに関する責任者でもあるEszter Vályi-Tapaは言います。
努力はこの点でも実を結びました。包装のエキスパートであるSándorは、「市場では原料が不足しているため、ボッシュにとっては二重のメリットがあります」と説明し、リサイクル包装はボッシュのコスト削減だけでなく、環境にも役立っていると付け加えます。
これはグループ全体にとって重要なポイントであり、2020年に大手製造企業として初めてカーボンニュートラルを実現したボッシュは、カーボンニュートラルの質をさらに高めることに取り組んでいます。物資の調達から販売する製品まで、付加価値チェーンに沿ったすべての上流および下流の活動を可能な限りカーボンニュートラルにすることを目指しており、2030年までにこれらの活動に関連する排出量を15%削減する必要があります。
優れた包装
ボッシュ電動工具は、持続可能な製品と包装にますます力を入れています。例えば、イギリスのストーマーケット工場では、ガーデニングアクセサリーの包装を変更し、プラスチック製のブリスターパックから段ボールに変更しました。この変更により、プラスチックの使用量を年間52トン削減することができました。また、この新しいソリューションは費用対効果にも優れています。このプロジェクトは、EHS&サステナビリティアワードの資源効率性部門賞に輝きました。